結婚祝い [小さなお話]

結婚が決まったんだってね。。。
おめでとう
今が一番幸せって顔してるよ
ホントに良かったね
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えっ?
結婚っていいものですか?って。。。
今、そう聞いた?
それ、聞いちゃう?

そりゃあ、私も結婚生活20年。。。
先輩っちゃあ、先輩だけどね
こればっかりは、人それぞれ
百人いたら、百通りの結婚の形が存在するんだよ
私の話なんて、役に立たないと思うけど

あら、そう。。。
参考までに聞いておきたいの。。。

そこまで言うなら、ちょっと話しちゃおうかな

結婚ってね
目の前にたくさんあるトンネルの中から
ここって決めたトンネルを
歩いて入っていくようなもんだと思うのよね
真っ暗なトンネルを。。。
ろうそくの明かり一つだけ持ってさ
っでね。。。
いつか出口が見えてくるだろうって
そう思って。。。
そう信じて。。。

そして、そのトンネルを抜けたらね
とても素敵な世界が広がってるはずだ!!!
なんて、期待に胸を膨らませながら

最初はさ、元気よく歌なんか歌いながら
歩いているんだけど
なかなか出口が見えてこなくて
そのうち不安になって
心細くなって
疲れて足も思うように動かなくなる
でも、立ち止まっても仕方ないから
必死に歩くんだよね

そうやって、歩いて、歩いて
20年。。。

ところがさ。。。
20年も歩いてきたのに
私の選んだトンネルは
結局、行き止まりだったのよ

なぁんだ、このトンネル。。。
開通してなかったのか。。。なんて
びっくりして言葉も出なかったわ。。。

いいえ。。。歩いている途中で
もしかしたら、こんなことになるんじゃないかなんて
思わなくもなかったのよ
でも、そう思っちゃったら
歩けなくなっちゃうでしょ
だから、そんな考えは打ち消して。。。
考えない様にして
ただ、光を求めて歩くんだよね
まあね。。。私の場合
結局行き止まっちゃったんだけどさ

もう20年。。。歩いてきちゃったからね
今さら戻るったってまた、20年歩かなきゃならないし
そんなことしてたら、人生終わっちゃうわよね
だからさ
戻るに戻れないんだよね。。。これが
ふふっ。。。笑えるでしょ
どうせ行き止まるんだったら
結婚して2、3年目くらいで行き止まって欲しかったわよね


あっ。。。ごめんなさい

これから結婚しようっていう人に
なんて話してるんでしょ
あくまで、これは私の場合で
ちゃんと出口までたどり着く人はいっぱいいるし
あなたは、きっと大丈夫よ。。。

ほらほら、そんな顔しないで
不安にさせちゃったみたいね。。。
本当にごめんなさい

絶対、幸せになってね
私の話なんて参考にもならないから
忘れてほしいわ
あなたはあなたのトンネルを
一歩一歩確実に歩いていけばいいんだから

ん?
それで、行き止まったトンネルの中で
今、私はどうしてるのかって???

これが不思議なのよね
20年もトンネルの中を歩き続けてるとさ
人間、強くなるのよ
最初は暗がりが怖くて
泣いてた日もあったのにね

今はさ。。。

自分で掘り進んでるわよ
出口を目指して
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20年かけて入り口に戻るより
光に近いような気がして
泥だらけになりながらさ

いつか、光にたどり着けるはず。。。なんて
これもさ、思い込みかもしれないけどね

でもね。。。
思い込まなきゃ進めないのよ

それは私だけじゃなくて
みんな、そうだと思う
だって、誰もが幸せになるために
光を求めて。。。
その一歩を踏み出すんだもん
たったろうそく一本の明かりだけで。。。

それが、結婚なんじゃないのかしらね

あらあら、何で泣いてるの?
感動したって???
それほどの話じゃないわよ
なんせ、私のは行き止まりのトンネルなんだから

ふふふっ

あなたのトンネルは。。。
ちゃんと開通してるといいわね

末永く。。。お幸せに
結婚、本当におめでとう。。。

っでね。。。
私の結婚祝い、受け取ってくれる?

まさか使うことはないと思うけど
万が一ってこともあるからね。。。
行き止まった時のために

はいっ、つるはし。。。持ってきたわ

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……。

やだ、冗談よ、冗談。。。
本当は掛け時計なの
使ってもらえると嬉しいわ

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幸せになってね
あなたの明日に。。。
光が満ち溢れますように。。。

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さぁ、これでなんの思い残すこともなく
天国へいけます
結婚直前の自分と話したいなんて
我儘言ってごめんなさいね
でもね、死ぬ直前に走馬灯のように
今までの自分の人生が見えた時
思い出したんですよ
結婚直前に親戚のおばさんっていう人が
突然やってきて。。。
お祝いに掛け時計をいただいたこと
その時、トンネルの話をしてくれて。。。
あの話を聞いたから
私は心の中につるはしをコッソリ持って嫁に行ったんです
念のためにってね
だから、行き止まったときも
絶望だけはしなかった
結局、生きてるうちに光にたどり着けはしなかったけど
幸せでした
幸せって。。。辿りつく事じゃなくて
希望を持って前に進める時間のことを
言うんじゃないかって
人生を終えてみて。。。
そう事を思うんですよ
だから、これからトンネルへ向かう私に
教えてあげたかった
希望の種はいつも心に隠し持っていた方がいいって

これでもう大丈夫。。。
でも、あの日。。。
トンネルの話をしてくれた親戚のおばさんって
私自身だったんですね。。。
それが一番のびっくりです
死んでから、こんなにびっくりすることがあるなんて
思ってもみなかったわ

ふふふっ。。。

じゃあ、行きましょうか。。。死神さん
あなたが優しい方で
本当に助かりました。。。

    おしまい

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