娘が生まれた日のこと [エッセイ]

娘が生まれた日。。。

あの日のことは、今でも鮮明に覚えている

100人に子供が生まれれば
100通りのドラマがそこにある

私だけが特別というわけではない
母であれば、誰もが。。。特別なその日を迎えているはずだ

私が持っているのは
そんな。。。
どこにでもありそうな
だけど世界にたった一つしかない
命の誕生の物語

そんな話を今日は。。。
載せてみようと思う。。。


○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●  ○  ●



破水が先だった。
食事が美味しいというだけで選んだ個人病院へ向かう。

陣痛が微弱なので、促進剤を入れる。
1本では効かなかった。そして2本目。

……効きすぎた。

すぐに生まれてもおかしくないほどの間隔の短さで
凄まじい陣痛が襲ってきた。


。。。。。。。そして、数時間。。。


いっこうに赤ちゃんは降りてこず。。。
分娩停止。。。陣痛ばかりがやってくる。

結局。。。個人病院では手に負えず。。。

大学病院へ緊急搬送。。。

救急車に乗せられた。
救急隊員のお兄さまに罵声を浴びせながら。。。(お兄さま、あの時は、ごめんね!!!)

やっと。。。大学病院に到着する。
レントゲンをとり、すぐに帝王切開の手術を受けることになった。

その間もずっと、ずっと、ずっと……陣痛は続いていた。
おっそろしいほど短い間隔で。。。
私は疲れ果てていた。
疲れているのに、痛みは休むことなく訪れて
私を休ませてはくれなかった。


しかも、この陣痛をいくら乗り越えても、
赤ちゃんが自然に生まれてくることは無い状態。
その時の私の望みはただ一つ。。。

「早く……麻酔を。。。」




やっと緊急オペを受ける事になった。。。

これで、麻酔をうってもらえる!!!

そう思っていた私の隣に看護師がやって来た。

「いくつか質問にお答えくださいね。」

……問診???
……こんな時に???

と思った。
でも、仕方が無いので答える事にする。

手っ取り早く、済ませてよぉ!!!

心の中で願いながら。。。

「お名前は?」
「住所は?」

。。。からはじまり、長々と質問は続く。

相変わらず、気を失いたくなるような陣痛の中、、、叫ぶように答えていく。

「宗教はなんですか?」
「初婚ですか、再婚ですか?」

そしてついに、

「今まで、お子さんをお産みになった事は?」

「ありません*♪~」

「では、だんな様には他にお子さんはいらっしゃいますか?」

……えっ。。。

それって、どういう意味。。。
まして、今こんな状況で答えなきゃいかんの?

ぶちきれた!!!

でも、もう抗議する力も残っていなかった。

問診が終わり、やっと、今度こそ、絶対……麻酔。。。と思った。
執刀医ならびに手術スタッフの面々が私を囲む。

どの人が、、、麻酔医???
誰でもいいから。。早く助けて~~~。

と心の中で叫ぶ私。

手術スタッフの方達は、満面の笑みを浮かべ話しかけてくる。


「はじめまして、○○と申します。今日は、私が執刀させていただきます。」

……???

「私は麻酔科の○○です。どうぞよろしく。」

……自己紹介???
。。。って。。。全部で何人いるの???

勘弁してくれ!!!


腰が砕けてなくなりそうな陣痛の中で。。。
長い長い自己紹介が。。。始まっていた。。。


こんな出産経験を話したら。。。
世の中の少子化が進んでしまいそう。。。だよね。

でも、どんな目にあったって。。。
娘の命を授かったことに感謝せずにはいられない。

娘に出会うためだったんだから。。。

このくらいの試練。。。
なんてことはない。

なぁんて。。。今だからそう思えるのかも。。。(笑)
(あの時は、痛みに耐えることで精一杯だったからなぁ。。。)



結局。。。
私の出産は。。。
この先も、ただでは終わらなかった。。。


長かった。。。自己紹介が終わり
麻酔科の先生が言う。。。

「麻酔ウチますんで。。。ちょっと痛いですよ。」

何をおっしゃるうさぎさん!!!である

だって、陣痛が次から次に襲ってくるその時の私に
針をさす痛みなんて。。。
麻酔を打つ痛みなんて。。。
可愛い痛みだ。。。


どうぞ。。。ご遠慮なく。。。さぁ。。。はやく。。。


心の中で、そう叫んでいた


麻酔ってすごいなって。。。
今思い返しても、そう思う
感動すら覚える

だって、麻酔を打ったら。。。
陣痛の痛みは。。。きれ~になくなった
今までの苦しみが、嘘のようだ。。。

麻酔が効いているのを確認した後
執刀医の先生が言った

「5分で産まれるよ。。。」

えっ。。。5分。。。

痛みがなくなった私は
やっと会える我が子との対面にワクワクした

ゴロン。。。

かすかにそんな感じがした。。。
それが、娘を産んだときの私の感想。。。

助産婦さんがすぐに娘を抱いて
私に見せてくれた


「女の子ですよ。。。手も足もありますよ
 指も。。。ちゃんと5本ずつ
 おめでとうございます!!!」

娘がそこにいた
なんだかとても、嬉しかった。。。

「ありがとうございます。」

しばらく、幸せを噛みしめていた

その時。。。
突然。。。執刀医の先生の声が響いた

「なんだこれは!!!」

何???何があったの???

不安に思っていると、執刀医の先生はこう続けた。。。

「あぁ。。。これは切らなきゃならんね
 あのね。。。卵巣に腫瘍があるから
 このまま、切除するからね
 もう少し、時間がかかるよ
 がんばってね。」

腫瘍。。。って???

私はその時。。。はじめて。。。
自分が持っていた卵巣のう腫の存在を知った

知ったと同時に。。。切除

運が良いんだか。。。悪いんだか。。。(汗)


それからのことは。。。
痛みの記憶しかない

本来、全身麻酔で行う手術
しかも、予定外の緊急切除

麻酔も。。。完璧にというわけにはいかなかったらしい

麻酔科の先生に

「すみません。。。痛いんですけど。。。」

手術中、なんどもなんども訴えた
なんともうるさい患者だったと思う

結局。。。それから1時間半
私は卵巣のう腫の切除手術を受けていた

可哀そうだったのは
だんな様である

朝、個人病院へ私を送り
仕事に出かけて行った

仕事が終わる頃には
我が子と対面できるかな。。。
と思っていたに違いない

なのに。。。急に
大学病院へ救急搬送されたと
電話で聞かされ
駆けつけてみれば、帝王切開

それだけだってびっくりなのに。。。
娘は早々と出てきたが
そのあとすぐに出てくるはずの私が
いつまでたっても出てこない

それから、1時間半

何の説明もなく、だんな様はただただ
手術の終わるのを待っていた

そして、手術が終わった直後
執刀医の先生に呼ばれたそうだ


「これが、切除した卵巣のう腫です。」

そう言って、娘とほぼ同時に私から産まれた?
テニスボールより少し大きな腫瘍を見せられた

ちなみに、だんな様は血を見るのが嫌い
テレビで手術場面など流れようもんなら
すぐにチャンネルを変えるタイプである
かなり、ビビったに違いない

「じゃあ、ちょっと切ってみますね。」

そんなだんな様の気持ちをよそに
先生はその腫瘍にメスを入れた

中からは。。。髪の毛の束と歯のかけらのようなもの。。。

私も後から知ったんだけど。。。
こういう腫瘍は、よくあるらしい。。。

でも、そんな事を知るはずもないだんな様
そして、悪いことに。。。
だんな様は、美容師
私は、ずっと歯科医院勤務

髪の毛と。。。歯???

これは、まちがいなく。。。


たたりだぁ!!!

次の日。。。朝早く会いにきてくれただんな様に
この話を聞いた時は。。。思わず吹き出した

だって、たたりだと思った瞬間のだんな様の顔を
想像しちゃったんだもん。。。

笑うとまだ。。
傷口が思い切り痛くてさ
涙が出そうになった
でも、なんとかこらえる

たたりの話をしたあと。。。
だんな様がこう言った

「手術室からさ
 お前がちっとも出てこなくてさ
 死んじゃったかと思ったよ。。。
 お願いです。。。助けてください。。。って
 何度も何度もつぶやいちゃった
 あんなに真剣に祈ったのは
 生れて初めてだったな。。。」


なんだか
今度は本当に涙が出てきた

痛くてじゃないよ。。。

嬉しくて泣いたんだ。。。
そんなに祈ってくれてたんだなぁ。。。ってさ

なにはともあれ

こうして、私は母になった

大変な出産ではあったけれど
今。。。娘が大きくなって
笑った顔など見ていると
どんな痛みもどんな苦労も

たいしたことないな。。。

と思えてくる

だって、あの出産と
そして、あのたたり?を乗り越えたからこそ

こんなに幸せな今があるのだから。。。(^^)v



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コメント 8

haru

出産は100人いたら、100通り。ホントですよね。
母は、やっぱり強しですね。
私もお産では、ひどい目にあいました。息子にその話をすると
「たのむから止めてくれ」と言います。(笑)
自分の出生にまつわる話なのに……。そういうことは聞きたく
ないと。男はやっぱり臆病ですね。なので、捕まえてでも教え
ようとする私。耳を塞いで逃げる息子。 ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ 
そんな追いかけっこができるのも、生まれてきてくれたおかげかな。(笑)
by haru (2011-04-17 19:55) 

リンさん

大変なお産だったんですね。
「宗教は?」なんて、そんなことまで聞くんですか。ビックリ^^;

私のお産は、すごく安産でした。
分娩室に入ってから、10分くらいで生まれちゃいました。
お医者さんも驚きの早さでした。
本当に、お産っていろいろですね。
by リンさん (2011-04-18 00:01) 

海野久実

すさまじくもあり、りこさんらしくユーモアもありで、ところどころ笑わせていただきました。
「こらー、どこが笑うところなんだよ!」
なんて言われると、即、謝ります。

大学病院の先生方も何となくユーモラスですよね。
by 海野久実 (2011-04-18 23:58) 

pino

私も出産してから
出産て本当に人それぞれなのだって
しみじみ思います~
私も陣痛がきてもきても降りてこなくって
先生がどうする?あと4時間がんばれる?って
聞かれた時に「がんばれません!」って即答で
帝王切開になりました(笑)
陣痛来てから4日目のご対面でしたが
やっぱり感動しました。
自己紹介なんてされなかったですよォ??
そのあとまで大変だったなんて!!(笑)


by pino (2011-04-19 11:55) 

春待ち りこ

>haruさん
haruさんにもありますよね。
母であれば、ねぇ~。
息子さん、聞きたがらない?
なんとなく、わかるような気がします。
男の子には、苦手な人が多いらしいですね。
でも、自分の命の最初の物語。
知っておいた方がいいよね。

そんな追っかけっこ。。。
きっとそれも、幸せの形なんでしょうね。(^^)v
by 春待ち りこ (2011-04-19 22:53) 

春待ち りこ

>リンさん
安産だったんですね。うらやましい。
私もスッと産もうと決めてたんですけど
ダメでした。(笑)

宗教まで。。。聞かれました。
宗教上の理由で、輸血がダメだったりする方もいるので
冷静に考えると仕方がないとは思うのですが
あの時は。。。
なんで?????
と叫びたくなりました。

今となっては、笑える思い出ですけど。クスクス(´艸`o)゚.+:
by 春待ち りこ (2011-04-19 22:57) 

春待ち りこ

> 海野久実さん
笑っていただいて、大丈夫ですよ。(笑)
出産直後。。。
友人にこの話をしたら、みんな笑ってました。
私としては、大変な出産だったのですが。。。
なんせ。。。たたりだぁ。。。って

私が書く小説より。。。上手くオチてます。
もちろん、全くの真実で
作ってませんが。(汗)
by 春待ち りこ (2011-04-19 23:03) 

春待ち りこ

>pinoさん
pinoさんも帝切だったんですね。
あれは、術後も痛いですよね。
陣痛も術後の痛みも両方味わうなんて。。。ね。(笑)

私は。。。
そのあとも、こんなおまけがついてしまいました。
人生って、いろんなことがあるなぁと
しみじみ感じた出産でした。

それでも、娘が無事に産まれてきてくれたので
あんなに痛かった出産も
大切な思い出の一つ。
母ってのは。。。そんなもんですね。(^^)v
by 春待ち りこ (2011-04-19 23:22) 

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