墓 [詩]

遺骨のない墓がある
墓石に名前を刻まれながら
ついに帰れなかった人がいる

墓の下には。。。
一枚の紙切れが
遺骨のふりして眠っている

けれど、それが彼で無いことは
悲しいくらいに明らかだ

「骨も戻らなかったんだ。」

と父は言った

そうだね。。。
それが戦争



戦争は、骨の無い墓を生み
そして、墓石の無い骨は
光も届かぬほど深い海の底に

今も沈んだまま。。。


盆には帰ってこられるのだろうか?
彼の魂を彼のいない墓で供養して

この線香の煙は
遥か彼方の彼の眠るあの海まで
届くのだろうか?

彼は、どんな想いで
最期の時を迎えたのだろう

もう、誰にもわからない
あの船から帰ったものは
誰もいない


そんなことをぼんやり考えながら
私は、彼のいない彼の墓の前で
手を合わせていた

一度も会うことの出来なかった叔父

彼の遺影は
若くて凛々しい

小さい頃は。。。
その凛々しさに
あこがれさえ抱いたものだ

けれど。。。
その若さが、今は切ない

彼がその凛々しさで向かった先は
戦場だったのだ。。。


永遠の魂なんてものが
もし、本当にあるとするならば

彼は今頃。。。

光も届かぬような海の底から
そっと空を見上げ続けているのかもしれない
祖国を思い、祈りを捧げ続けているかもしれない


父と母が眠るこの祖国の土に
返りたいと。。。

生まれ育った故郷の地に
帰りたいと。。。

それが、決して届かぬ願いだとしても……


そして。。。

彼の眠る海の底は
永遠に彼を抱いたまま

今日も静かに
沈黙を守り続けている。。。

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コメント 8

もぐら

哀しいですね。
でもきっと魂は帰ってきてくれると信じます。

私も若くして亡くなった叔父の歳を越えました。
なんだか不思議な感じがしました。
by もぐら (2011-11-24 23:38) 

海野久実

実は、こういうう内容の作品が一番コメントしづらいんですよね。
戦争という悲劇はあまりに重くて、言葉を失ってしまいます。

戦争でなくてもこういう事は、まだ記憶に生々しい、あの津波の被害でもあるんですよね。
行方不明者がまだ4千人もいらっしゃいます。
by 海野久実 (2011-11-25 18:31) 

リンさん

「千の風になって」でも言っていますが、亡くなった人は風になって自由に飛び回っている。
そう思えば、少しは悲しさが薄れるかもしれませんね。

by リンさん (2011-11-25 19:44) 

かよ湖

色々な事を考えさせられます。
今、この瞬間も、地球上では戦っている人たちがいるのでしょうね。悲しい現実です。
by かよ湖 (2011-11-25 19:51) 

春待ち りこ

>もぐらさん
魂は。。。帰ってくる。。。
そうですよね。そうであってほしいです。
遺影の中の叔父は。。。本当に若いです。
軍服を着ています。。。海軍だったそうです。。。

私の知っているのは、それだけ。。。

だけど、小さい頃から。。。毎日
遺影に向かって手を合わせていました。

考えてみると、不思議です。。。
将来。。。私の遺影に私の知らない子供が
毎日、手を合わせる図を想像してしまいました。

そんなことも。。。あるのかな。。。(笑)
by 春待ち りこ (2011-11-26 23:53) 

春待ち りこ

> 海野久実さん
コメントしづらいですよね。。。
私も実は、この詩には。。。
コメント、入らないかと思っていました。(笑)

戦争をテーマにしたものは
時々書きます。。。
書かなきゃいけないと思う話が
いくつかあります。。。

それは、誰かが読んでくれるだけでOKなんです。。。
知ってくれるだけで。。。
でも、自分で書いていても。。。めげてしまったり。。。
悲惨な現実ですね。

震災の津波も。。。
あれは、まだ。。。本当に記憶に新しくて。。。
気持ちの整理がついていません。
仙台に住む親類も。。。家を流され。。。店を流され。。。
それでも、最近、商売を再開したそうです。。。
悲しみの中でも。。。たくましい。。。
生きる力を見た気がしました。
by 春待ち りこ (2011-11-27 00:04) 

春待ち りこ

>リンさん
そうですね。。。
死んでまで、肉体や。。。骨に縛られるのは嫌です。。。
風になって、飛び回る。。。
宇宙旅行をする。。。
いろいろやりたいことが、いっぱいです。(笑)

でも、子供の頃、初めて。。。
お墓に遺骨が無いことを知ったときは
びっくりしました。。。
そういうことなんですよね。。。戦争というのは。。。

by 春待ち りこ (2011-11-27 00:07) 

春待ち りこ

>かよ湖さん
ちょっと、重たい詩でしたが
読んでいただいてありがとっ♪

戦争や内乱。。。なくなりませんね。。。
人と人が殺し合うことを
誰も止められないんですね。。。

そう思うと、悲しくなります。。。
いつか。。。無くなるといいですね。。。こういう悲劇は。。。
by 春待ち りこ (2011-11-27 00:09) 

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