かくれんぼ [小さなお話]

「かくれんぼしよう。」

僕の提案に
ひろくんはすぐ、賛成してくれた

「うん。。。そうしよう。
 じゃんけんで、鬼を決めようぜ。」

じゃんけん ぽい!!!
。。。あいこで しょ!!!

「あ。。。負けた。
 僕の鬼だね。

 じゃあ、ひろくん
 僕が100数えるから
 その間に隠れてね。」


MB900408102.JPG

ここは。。。
僕たちが小さい頃から
遊び場にしている神社の境内

鬼になった僕は、目をつむって
ゆっくりと数を数え始める

いち。。。にい。。。さぁん。。。しぃ~。。。ごぉ~。。。
。。。。。。。。。
きゅうじゅうはち。。。きゅうじゅうきゅう。。。

ひゃ~く!!!


よぉ~し、探すぞ

ここかな。。。ちがうなぁ
どこかな。。。いないなぁ

きっとこのへんかも。。。
ちがった。。。

ひろくん、隠れるの上手だな

ちっとも見つからないや

待ってろよぉ。。。
絶対見つけてやる!!!


ずいぶん長い間、探し続けた。。。
どれくらい時間がたったのだろう
いつのまにか。。。
夕焼けが燃えだしている

ひろくんたら。。。
いったいどこへ隠れたの?

僕は、あちこち探し疲れて
神社の境内に戻ってきた


もしかした、ひろくんも
境内に戻っているかもしれないと思って

だって。。。

もうそろそろ、晩御飯の時間だもんな

けれど、そこにひろくんの姿はなかった
まだ、隠れているのかなぁ

僕はもう一度。。。
あたりをゆっくり見渡した

すると、御社のすぐ隣にある御神木の後に
ちらりと人影が。。。

きっとひろくんだ!!!

かけよって
のぞきこむ

ほら、やっぱりひろくんだ!!!

「ひろくん、みっけ!!!」

「あっ。。。見つかっちゃった。」

「じゃあ、今度はひろくんが鬼だよ。
 でも、今日はもう。。。お腹がすいたし
 続きは明日ね。」

「明日は無理。。。」

「えっ、なんで?
 用事があるの?」

「うん。。。
 行かなきゃいけないとこが出来た。
 だから、もうかくれんぼは出来ない。
 たぶん。。。
 もう遊べないと思う。」

「えっ?なんで???
 もうって。。。
 ずっとってこと?
 そんなのやだよ。
 どうして?
 引っ越すの?」

「そう。。。だな。
 引っ越すことになっちゃったんだ。」

「それなら、もっと早く言ってくれればいいのに。。。」

「急に決まったんだよ。
 ほんとにごめんな。。。」

「うん。。。
 でも、もう会えないなんて
 さみしいよ。」

「あぁ、さみしくなるな。」

「引っ越しじゃあ仕方ないけどさ。
 元気でね。。。
 手紙書いてよ。。。こっちも書くから。」

「うん。。。わかった。」

「じゃあ、ばいばい。。。」

「ばいばい。。。」

line_check03.jpg

「ばいばい。。。」
そう言って、よっちゃんに手を振った

俺は。。。
そろそろ行かなきゃいけない

久しぶりのかくれんぼ。。。
ちょっと熱くなりすぎた

俺は、絶対見つかりたくなくて
神社の真ん前にある公園の
ストックハウスの中に
隠れようと思ったんだ

普段は、廃品回収用の物置として使われている
ストックハウス

でも、この間。。。廃品回収があったばかり
だから、今は。。。
空っぽのはずだ

あそこなら、絶対見つからない自信があった

少し距離があったが
俺は、公園を目指した

急がないとよっちゃんが
探しに来る

ちょっとあせっていたんだ

あせる必要なんてなんにもないのに。。。
ただのかくれんぼなのに。。。

そしてつい、左右を確認せずに
道路を渡ってしまった

その時、トラックが
もの凄いスピードで近づいてくるのが見えた

MB900236987.JPG

あとのことは
よくわからない。。。

気付いた時には
病院にいた


……。

お母さんが泣いていた
お父さんも泣いていた

俺が病院のベットで寝ている

わぁー、体中、怪我だらけ


大変だ!!!

って?

なんで俺があそこにいるの?

俺があそこにいるってことは。。。

じゃあ、ここにいる俺は
いったいなんなんだぁ?

その時初めて
俺は、宙に浮いていることに気が付いた

ということは。。。
つまり。。。

そっか。。。
俺。。。死んじゃったんだ

ふいに
そばに誰かが近づいてくる気配がした

「だれ?」

「私は天使さ。
 迎えに来たよ。。。
 さぁ、天国まで案内してあげるよ。」

「ちょっと待ってよ。
 俺、今。。。かくれんぼの途中なんだよ。
 きっとまだ、よっちゃんが
 俺を探しているはずなんだ。
 
 せめて、よっちゃんに。。。
 さよならが言いたい
 お願いだから。。。ちょっとだけ待ってよ。」

「えっ?
 そうか。。。う~ん。。。
 ほんとはこういうのいけないんだけど
 突然だったもんな。。。
 まっ。。。いっか。
 じゃあ、ちょっとだけだよ。
 ちょっとだけなら、待っていてあげるよ。
 今の君。。。生きてる人には見えないはずだから
 ついでに。。。
 そのお友達にだけには見えるようにしてやるな。」

天使は、俺の願いを
おまけつきで叶えてくれるらしい

優しい天使でよかった

「ありがとう。」

俺はお礼を言って
急いで。。。
あの神社に向かう

神社では、やっぱり
よっちゃんがまだ、俺を探してくれていた

もう。。。夕焼けの時間

あいつはそういうやつなんだ
もう、何時間も探し続けてくれてるんだろう

俺が先に帰っちゃったかも。。。とか
思ったりしないんだよな

そういうとこが好きで
親友をやってるんだ

でも、よっちゃんとかくれんぼ
もう出来ないんだよな。。。

そう思うと涙が出てくる
よっちゃんにこんな顔を見られたくない

最後は、笑って「ばいばい」する。。。
それが、男ってもんだ。。。たぶん

とりあえず、気持ちが落ち着くまで
神社の御神木の陰に隠れることにした

俺は、うつむいて
気持ちを落ち着かせようとした

涙よとまれ!!!
って願いながら


「ひろくん、みっけ!!!」

突然。。。よっちゃんの声がした

顔をあげると
よっちゃんの笑顔が
俺の目の前にあった。。。

「あっ。。。見つかっちゃった。」

努力の甲斐あって
涙はどうにか
止まっているみたいだ

よかったぁ

でも、よっちゃんに
なんて言えばいいんだろう

俺は悩みながら
結局。。。死んでしまったことを
最後までよっちゃんには言えなかった

死んでるなんて言ったら
怖がって逃げちゃうかもしれない

そう思ったら
本当のことなんて言えるもんか

何にも言えないまま
それでも俺は、よっちゃんに
「ばいばい。。。」と言った。。。


よっちゃんと別れた後
天使のところに戻る

これから、天国へお引越し。。。だ

「ねぇ。
 天国から、手紙書ける?」

俺は、天使に聞いてみた

「一通だけならね。」

「そっか。。。
 一通だけなのか。」

「でもね。
 一年に一度はここに戻れるよ。
 ほら。。。お盆の時にさ。
 その時におとうさんやおかあさんや
 仲のいい友達に
 また、会えばいい。。。」

「そうなの?
 じゃあ、お盆が来れば。。。
 友達とまた、かくれんぼ出来るかな。」

「う~ん。。。
 君の姿は生きてる人には
 見えなくなっているからなぁ。。。」


かくれんぼするのは。。。
やっぱり、難しいのか


でも、俺はお盆が来たら
とにかく挑戦してみようと思った
また、よっちゃんと遊びたい
かくれんぼをやりたい
そんなふうに思ったから


天国で。。。
よっちゃんへ手紙を書いた

約束したもんな。。。
手紙を書くって。。。


line_check03.jpg


朝目覚めると
枕元に一通の手紙が置いてあった

 よっちゃんへ

 お盆にもどるから
 かくれんぼの続きをしよう。
 見つからないように隠れろよ。
 今度は俺が鬼だからな。
          
           ひろより

かくれんぼをしたあの日。。。
交通事故にあって死んじゃった
ひろくんからだ

ひろくんが病院で息をひきとった頃
僕は、ひろくんと神社で話をしていた

あの時、パパとママに何度もそう言ったけど
結局信じてもらえなくて、悔しかった

もう二度と
ひろくんには会えないと思ってたんだ

でも。。。
お盆が来たら会える

僕はとっても嬉しくなった

その日から。。。
僕は、お盆を心待ちにした

カレンダーに
毎日毎日、印をつけながら
お盆が来るのを待っていたよ

そして。。。ついに
待ちに待ったお盆がやってきた

僕は、あの神社でひろくんを待った

誰にも信じてもらえないだろうけど
ひろくんは。。。本当に神社にやってきたんだ

「優しい天使がいてさ
 お盆の間、一日だけ。。。
 よっちゃんに
 俺の姿が見えるようにしてくれたんだ

『ほんとはこういうのいけないんだけど
 かくれんぼするんじゃ、見えないと困るもんな
 まっ。。。いっか。。。』

 ってね。」

ひろくんは、そう言って笑った
ひろくんが笑ったから、僕も笑った

ひさしぶりだよね
こうして笑いあえるのって

そうして二人で
かくれんぼをした。。。

もちろん、ひろくんが鬼で。。。


line_check03.jpg

あれから、毎年。。。
お盆がくるたび
俺らはあの神社で待ち合わせて
かくれんぼをしている

去年は、よっちゃんが鬼だったから
今年は俺が鬼の番

いつものように、神社でよっちゃんを待った

でも、いっこうに現れない

そっか。。。

今年はたぶん
よっちゃんはここにはこないな。。。

でも、よっちゃんの居場所はわかってる

俺は鬼だから。。。
これから探しに行くよ

真っ白い建物の真っ白い部屋

そう。。。ここは病院

俺は、よっちゃんの病室へ向かう

病室に入ると
よっちゃんはベッドで寝ていて
そのまわりには、よっちゃんの家族
みんな心配そうによっちゃんを見つめている

よっちゃんの。。。奥さん
息子たちそして、孫たち

みんな、よっちゃんの自慢の家族だ
よっちゃんが家族の話をするとき
とっても幸せそうな顔になる
その顔を見るたび

あぁ。。。よかったなぁ
よっちゃんは、しあわせなんだなぁ。。。
って思っていたよ

その自慢の家族に見守られながら
よっちゃんはこの病室にいる

しばらくすると。。。

よっちゃんは。。。深呼吸を一つした
大きな大きな深呼吸だった

そして。。。

それきり。。。もう。。。
よっちゃんが息をすることはなかった

あれが。。。最後の一呼吸。。。

よっちゃんの呼吸が止まった

「ご臨終です。」

医師が家族に
そう告げていた。。。

次の瞬間。。。

よっちゃんの魂は
身体をふっと抜け出して。。。

俺の前に現れた!!!

俺は言った

「よっちゃん。。。みっけ!!!」

「あっ、ひろくんだ。探しに来てくれたの?」

「うん、迎えに来たんだ。
 これからは、毎日かくれんぼできるな。」

「うん。。。そうだね。」

よっちゃんは、自分が今どういう状況なのか
ちゃんとわかっているらしい

さすが、大人だなぁ
昔の俺とは大違いだ

「じゃあ、いこうか。」

俺がそういうと。。。

「ちょっとまってね。」

とよっちゃんは言った

そして、家族の方へ向き直り
大きい声でこう言った

「今まで、本当にお世話様でした。
君たちのおかげで
楽しい人生でした。
ありがとう。。。」

もちろん、家族にはもう
よっちゃんの声は届かない

それでもいいんだよな
聞こえないってわかっていて
それでも、そう言わずにはいられないほど
きっと。。。きっと。。。
よっちゃんの人生は素晴らしいものだったに違いない

俺は、そんなふうに思った


「じゃあ。。。
かくれんぼの続き。。。やりにいこうか。」

そう言いながら、よっちゃんが笑う
これからはまた二人。。。
夕焼けが燃えるまで、毎日遊べるな。。。

永遠のかくれんぼの始まりだ

俺たちは二人で仲良く。。。
天国へ旅立った


line_check03.jpg


一方。。。こちらは
二人が天国へ旅立った後のよっちゃんの病室


「ねぇ。。。なんだかおじぃちゃん。。。
嬉しそうに見えないか?
そりゃあ、死ぬのが嬉しい人なんていないと思うけど
ちょっと笑っているような
穏やかな顔しているよね。」

「うん。。。
前にさ、おじぃちゃん、こんなこと言ってたよ
おじぃちゃんには、あの世に仲のいい友達がいるから
死ぬのは全然怖くないって
また、その友達と毎日遊べるようになるからって。。。」


「そっか。。。
案外、今頃は
その親友と一緒なのもしれないな。
だって。。。
死に顔がこんなに嬉しそうだなんて。。。
きっとその親友が迎えに来てくれたに違いないよ。」

「だったらおじぃちゃん、さみしくない?」

「うん、さみしくないさ。きっと。。。」

「そっか、ならよかった。」

よっちゃんは。。。

最期まで優しい家族に囲まれて
幸せな人生をおくったのだ

line_check03.jpg


そして。。。今。。。

天国には。。。
数を数える元気な声が響き渡る

そう。。。あの二人が
かくれんぼをしているのだ

「じゃあ、ひろくん。。
今度は僕が鬼だから
100数えてるうちに隠れてね。」

いち。。。にい。。。さぁん。。。しぃ~。。。ごぉ~
。。。。。。。。。
きゅうじゅうはち。。。きゅうじゅうきゅう。。。

ひゃ~く!!!


              おしまい



着地点が見つからず
玉砕寸前のお話になりました。。。面目ない

えっ。。。すでに玉砕してるって???

そうかも(汗)

あぁ。。。まだまだです
もっと勉強します。。。はい。。。

また。。。
のんびり次回作を考えます。。。

長い目で見てください。。。(~_~;) ヨロピク

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順番待ち [小さなお話]

やぁ。。。
こんなところで会うなんて
奇遇だね

いつもは、朝しか会わないもんな。。。

えっ?
ここで何をしていたのかって?

今日は一日。。。
ここで空を見ていたんだ

僕は空が好きなんだよ

朝日の眩しさは
とても気持ちがいいし。。。
夕焼けはあまりにも美しい。。。
星空は魅力的で。。。
ワクワクするしね

いくら見上げていても
飽きないのさ

だから、毎日毎日。。。
空を眺めながら暮らしている



えっ?
仕事?

仕事ねぇ。。。
あえて言えば


今、順番待ちをしているところだ。。。
そう、順番待ちが僕の仕事なんだ
他にすることもないんでね

ん?
それで、幸せなのかって?

あぁ。。。
あらまし。。。幸せだ

おや?
不思議そうな顔をしているね

なら。。。
話してあげてもいいよ
僕の順番待ちの話

聞いてみるかい?

ハートライン.gif


「おはようございます。部長」

僕はそう言って頭を下げた

いつもの朝
いつもの挨拶

「あぁ、おはよう。。。」

ここでいつもなら
部長のまだ眠そうな声が聞けるはずだった

でも、部長は返事をしない

というより。。。
僕を見ようともしない

なぜだ?

そう考えると頭が痛くなった

昨夜はちょっと飲み過ぎたな

嫌なことがあったもんだから、つい
そう。。。昨日は
とっても嫌なことがあったんだ

……。

あれっ?
いったい何があったんだっけ

……。

あっ!!!

やっと僕は思い出した
昨日の最悪な出来事

そうだった。。。
僕は。。。

リストラされたんだった

なんてことだ
クビになったって言うのに
のこのこ会社にやってくるなんて
僕はなんて馬鹿なんだろう

だから。。。
部長のやつ、無視しやがったんだ

もう僕には
朝の挨拶すら必要ない

そういうことなんだろう。。。

ひどい仕打ちだ。。。


しかたなく
僕は家に帰った

昨夜は深酒をして
途中から記憶が消えている

妻にはまだ。。。
リストラのことは言えていないはずだ

でも、今日は言わなきゃな
黙ってたって、どうせ。。。
すぐにわかってしまうことだ

「ただいま。」

そう言いながら
玄関のドアを開ける

返事はない

妻は、どこかに出かけているのかもしれない
まさか、こんな時間に僕が戻るなんて
思ってもいないだろうから。。。

ちょっとほっとする

だが、リビングに入ると。。。
そこに妻はいた
テレビを観ながら
コーヒーを飲んでいる

「ただいま。。。
 実はさ。。。言いにくいんだが
 僕は、リストラにあってしまった。
 でも、心配するな。
 なんとかするから。。。
 とりあえず、失業保険をもらおう。
 それでしばらくは、暮らしていける。
 すぐ、次の仕事も探すよ。
 ほんとにごめんな。。。」

うつむきながら
一気に言葉を並べたてた
この不景気だ
そう簡単に、なんとかなるなんて
とても思えなかったけれど
こう言わないと話は進まない

全部言い終えて
少しだけ、気が楽になる
こんな言いづらいことは
パッと言ってしまうに限る

妻の反応が気になって
そっと顔をあげた

相変わらず。。。

妻はテレビを観ていた
こちらのほうなど。。。
見向きもせずに

まさか、聞こえなかったのか?
いや。。。そんなはずはない
妻はたぶん。。。
あえて、無視をしているのだろう

お前もか。。。

部長と同じだ
働かないものには。。。
かける言葉もないってか???
妻の反応に。。。唖然とした

昔は。。。
そう、結婚したばかりの頃は
こんな女じゃなかった
僕が会社に行こうとすると

「寂しいから。。。早く帰ってきてね。」

なぁんて言われたもんだ
変われば変わるもんだな

結婚すると女は変わる。。。

それは、よく聞く話だが
変わったように見えても
夫がピンチの時には
支えてくれる
それが夫婦だと思っていた
でも、現実は。。。。

無視だ

ははは。。。切なくて笑っちゃうよ。。。

妻は、テレビから視線を外さない

いたたまれなくなって
そっと家を出た


家のすぐ前に公園があった
そこのベンチにとりあえず腰掛ける。。。

MB900417066.JPG

あ~、やだやだ
スーツ姿で。。。こんな時間に。。。
公園のベンチに一人で座っているなんて

リストラされました!!!

って公言しているようなもんだ

まっ、仕方がないか

ほんとのことだから。。。

はぁ~

「おや。。。渡辺さん
 どうされたんですか?
 こんなところで。。。」

ふいにそう声をかけられた
見るとお隣の鈴木さんだ

「あっ、鈴木さん
 おはようございます。
 ちょっといろいろありまして。。。」

「そりゃあ、いろいろあったでしょう。
 こんなところにいるくらいなんだから。
 よかったら、私に話してみませんか?
 何かお力になれるかもしれませんよ。」

なんだろう。。。
この馴れ馴れしさ。。。

鈴木さんとは、いつも道で会えば
挨拶はするけれど
特に親しいわけでもなかった

今まで、仕事仕事の毎日で
隣の人がどんな人なのかなんてこと
まるで、興味がなかったから
鈴木さんについても
何も知らないに等しい。。。

鈴木さんって。。。
こんなに世話焼きタイプだったのか

力になるっていうけど
リストラされたと話せば
新しい就職先でも紹介してくれるかな。。。

たぶん。。。無理だろうな

鈴木さんはどう見ても
バリバリ働いているようには見えなかった
生気がないっていうのか
影が薄いっていうのか
そんな感じのする人だ

そもそもこの人が、何の仕事をしているのか
僕はそれすら知らなかったのだ

っが。。。
よく知らない人だから
話してみようという気になった

部長も妻も
無視しやがって。。。
僕の話を聞こうともしない

鈴木さんなら
ただ、聞いてくれるだろう

話すだけで。。。
少しは気持ちが軽くなるかもしれない


そう思って僕は
話を始めた

鈴木さんは。。。
うんうんと頷きながら
熱心に僕の話を聞いてくれた

それだけで。。。ありがたかった

「っで。。。
 情けないことに妻にも無視をされて
 こんなところでぼんやり座っていたわけです。。。
 でも、聞いていただけて楽になりましたよ。
 これから、職探しに行ってこようと思います。。。
 少しは、頑張らないといけませんよね。」


今まで、うんうんと頷き続けていた鈴木さん
なぜか、ここで首を横にふる

「いや。。。頑張らなくていいと思いますよ。」

「えっ?」

頑張らなくていい???

それは。。。慰めているつもりなのか
それとも、鈴木さんなりの励まし方なのだろうか

そういえば、最近読んだ本に。。。
精神的に疲れている人に
「頑張れ!!!」は禁句だと書いてあった気がする

そうか。。。
あれを実践しているってわけだな

「それでもね。。。
 僕は、頑張りたいんです。
 妻のためにもね。。。」

「あなたはもう十分頑張ってこられた。
 結果は、あなたの望むものではなかったでしょうが
 あなたの頑張りは本物でした。
 私はよく知っていますよ。
 あなたがどんなに頑張っていたか。
 もう、いいじゃないですか。
 
 こちらもそう悪くはないですよ。
 慣れてしまえば
 自由で。。。気ままで。。。気楽でね。」

「こちらって。。。どういう意味です?」

鈴木さんももしかしたら。。。
リストラ組?

その時。。。

自宅の前に
一台のタクシーが止まるのが見えた
妻が血相を変えて家から出てくる

そして、そのままタクシーに乗り込み
どこかへ出かけて行った

いったい何があったのだろう。。。
僕は気になった

「あの。。。鈴木さん
 ちょっと、妻が心配なので
 今日はもう帰ります。
 話を聞いてくれてありがとうございました。
 また、ゆっくりお話しさせてください。。。
 それじゃあ。。。」

僕が家に戻ろうとすると
鈴木さんが僕の腕をぐっと掴む

「何をするんだ。」

僕が叫ぶと鈴木さんは。。。
慌てた様子もなく
さっきと同じ穏やかな口調で
こう言った

「ちょっと待ちなさい。。。
 今、帰っても仕方がない
 私の話を聞きなさい。」

「でも、急いでいるんですよ。」

僕は、鈴木さんの手を振り払おうとしたが
凄い力で掴まれていて
どうにも振り払うことは出来なかった

「まぁ、聞きなさいって。。。
 あのね。。。
 あなたは昨日、リストラされて
 やけ酒を飲んで
 そのあと。。。人生に失望して
 首を吊ったんですよ。
 会社の裏の空きビルで
 思い出しませんか?
 
 たぶん、あなたの死体が発見されて
 奥さんに連絡がいったのでしょう
 もうあなたに。。。
 出来ることはありません。
 だって。。。死んでるんですから。。。」

「何をバカなことを。。。あっ。。。」

そこで。。。
僕の記憶が、突然戻ってきた

そう。。。
それは確かに昨日の記憶だ

昨夜、僕は。。。首をつった
リストラにあい、途方に暮れたのだ
この不景気だ
再就職はむずかしい
これまで死に物狂いで働いて
結果がリストラ
僕にはもう。。。
生きる気力が残っていなかった

あぁ。。。そうだった

そう考えれば
今朝からの出来事のすべてに
納得がいく

だったらなぜ、僕はここにいる?

「僕は幽霊になったんですね。
 だから、部長も妻も僕が見えなかった。
 嫌がらせで無視をしていた訳ではなかったのか。。。
 でも、だったらなぜ。。。
 鈴木さんには見えるんですか?」

「簡単なことですよ。
 私も幽霊だからです。。。
 人は死ぬとふつう天国へ行くんですがね。
 あなたは、天国へ行くより
 会社に行きたい気持ちが強かったんですね。
 リストラされたっていうのにまだ。。。
 もう、死んでいるというのにねぇ。。。
 でも、わかりますよ。
 実は、私もそうだったんです。
 だから、わかります。
 天国へはいずれ行けるはずなんですが
 順番があるみたいで。。。
 死んだ直後の最初のチャンスを逃すと
 しばらくは、この世で待ってなくてはならないのですよ。

 っで、私は順番待ちをしてるってわけです。。。

 私の姿形は、普通の人には見えませんが
 人間の中には。。。まれに霊視能力がある人がいるでしょ。
 人恋しい時には、そういう人と話をすることにしています。
 あとは。。。自由気ままに。。。
 何をしてもいいわけです。」

「えっ。。。
 だって、私は鈴木さんのことを
 随分前から知っていますよ。」

「そう。。。そうでしたね。
 あなたには、その霊視能力があったんですよ。
 自分では気づいてはなかったみたいですが。。。

 私は、人恋しくなると
 あなたや。。。
 まぁ、他にも何人かいる霊視能力のある人に
 朝の挨拶をしてまわっているんです。
 すると。。。
 私はここにいるんだって実感して
 安心するんです。
 死んでいるのにね。。。
 いや。。。死んでいるからこそなのかもしれません。
 よかったら・・・霊視能力者のリスト
 差し上げますよ。。。

 まぁ。。。気長にいきましょう。。。」

「そんな。。。ことって。。。」
 
僕の体中の力が抜けていくのがわかった

ハートライン.gif

こうして。。。
僕の長い順番待ちが始まったんだ

2週間くらい前。。。
鈴木さんの順番がやってきて
天国へ逝ってしまったので
今は。。。一人ぼっちだ

人恋しくなったら
霊視能力のある人に会いに行く

「おはようございます。。。」

「あっ、おはようざいます。」

「いってらっしゃい。」

「はい、いってきます。」

そして、軽い会釈


それだけでいいのだ
それだけで。。。僕は生きてる。。。

いや、死んでるんだっけ。。。

とにかく、自分はここにいる
。。。ということが実感できる

自殺なんて早まったなぁと
今は心から思うよ

でもさ

死んで初めてわかったこともある
僕には、生きてるあいだ
仕事ばかりに気をとられて
気付かなかったことがたくさんあった

朝日がとても眩しいこと
夕焼けが美しいこと
夜空が魅力的なこと

そんなことを改めて確認しながら
時間を過ごすようになったら
案外、こちらも悪くないかもしれない
そんなことを思うようになったよ

つくづく思うんだけどさ
仕事ってなんなんだろう。。。

朝日より輝いて
夕焼けよりも大切で
星空よりも素敵なものだったのか

死んでしまった今ではもう。。。
生きていたころの気持ちは
よくわからなくなってしまった

ただ、こうも思う

もしも、もう一度生きなおすことが出来るなら
今の僕なら、必ず幸せになれるだろうって

この世には。。。
人を幸せにする材料が
たくさんころがっているのさ
しかも、ありがたいことに
無料の幸せだ


生きているうちは
気付かないんだよなぁ
僕みたいに

なんてもったいないことをしたんだろう

まぁ、それでも。。。
今はこんなに素晴らしい景色を
毎日眺めて暮らせているから
あらまし幸せな気分で
順番待ちを続けていられる。。。

おいおい。。。
そんなに変な目で
僕を見るのはやめておくれ

嘘だと思っているのかい?
まぁ、信じられないのは無理もない

だが、真実さ

君の名前
鈴木さんのリストに載っていたんだ
鈴木さん。。。覚えているかい?

最近、見かけなくなっただろ

そりゃそうさ

彼は今頃。。。
天国にいるんだから

クックックッ。。。

これで、僕の順番待ちの話はおしまい

どうだい
面白かったかい?


あっ。。。


それと、あとひとつだけ
君に話さなきゃならないことがあったんだ

君は、今朝。。。
自分が交通事故にあったこと
覚えているかなぁ。。。

普通はあの時
天国へ行くはずだったんだけどね

君は。。。
まだ会社に行きたかったんだね

MB900295352.JPG

もちろんわかるよ。。。
僕もそうだったから

あらら。。。
泣き出しちゃったよ

戻ったんだね
事故の記憶が

僕がこんなことを言うのもなんだけど
元気出せよな

ところで。。。

君も一緒に夕焼けでも眺めないか
こちらもそう悪くないさ

あとで君にも霊視能力者リストをあげよう
きっと役に立つと思うよ

MB900157171.JPG

なぁに。。。
気長にやればいい

順番がくるまで。。。

自由で。。。気ままで。。。気楽にね

           
          おしまい

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天使のポポ [小さなお話]

「私の背中には
いつになったら翼が生えてくるの?」

ポポは、おかあさんに聞きました

「そんなに焦らなくても
いずれ、生えてくるわよ。
それより、早く朝ごはん食べちゃいなさい。」

「だって。。。私もうすぐ、10才になるのよ。。。」

ポポは、大きなため息をひとつつきました


ここ、天使の国では
子供はだいたい、7才になると
背中に翼が生えてくるのです

もちろん、個人差はありますが。。。

ポポは。。。9才

でも、彼女の背中には
まだ翼が生えてきません

天使の学校のクラスメートたちは
もうとっくに飛べるようになっています。。。

「朝ごはん、いらないわ。。。もう、出なくちゃ間に合わない
私は飛べないから、学校へ行くのに時間がかかるのよ。
じゃあ、行ってきます。」

ポポはそう言って、家をでました

翼がないなんて。。。
私はなんて、不幸なのかしら。。。

そんなこと考えながら
ポポは、雲の上を歩いていました

「あっ」

前をよく見ずに歩いていたので
雲の切れ間に気づきませんでした

「きゃー!!!」

ポポは。。。雲の切れ間から
地上へと落ちてしまいました


image4392.gif

「イタタタタ。。。」

ポポが落ちた場所
そこは、雲ではなく
土の地面が広がっていました

見上げると天使の国ははるか空の上
翼のないポポには、帰ることができません

「帰れなくなっちゃった。。。
 どうしよう。。。」

ポポは、泣きそうになりながら
とぼとぼと歩き始めました

しばらく歩いていると
遠くから誰かがやってくるのが見えます

「誰か来る。良かった!!!
 これで帰れるわ。」

近づいてきたのは
ポポと同じくらいの年ごろの女の子でした

その女の子を見て、ポポはハッとしました


「あっ、あの子にも翼がない。。。」

同じくらいの年ごろで
ポポと同じく翼の生えてない天使に出会うのは
初めてのことでした

ポポは、その女の子に
思わず声をかけました

「あなたも翼が生えてないのね。
 可哀想に。。。」

女の子は目を真ん丸にしながら
こう言いました

「可哀想???何を言っているの?
 翼なんて、ふつう生えたりしないわ。
 鳥じゃないんだから。」

ポポは、びっくりして聞きました

「ここの天使には、翼がないの?」

「私は天使じゃなくて、人間よ。
 人間にはみんな、翼はないの。。。
 そんなことを言うなんて
 あなた、天使なの?」

ポポは言いました

「そう。私は天使。。。
 それにしても、人間って可哀想なのね。
 みんな翼がないなんて。。。」

すると、女の子はくすりと笑います

「ここでは、翼なんてなくても困らないし
 そんなことを言う人もいない。
 みんな毎日、元気に幸せに暮らしているのよ。
 私も自分に翼がないから
 不幸だなんて思ったことは
 一度もないわ。
 それに。。。見たところ
 天使のあなたにだって
 翼なんてないじゃない。」

「そうなの。。。
 私の住む天使の国では
 みんな翼を持っているの。
 だけど、私だけ
 翼が生えてこなかった。
 クラスメートたちは
 みんな、私のことを可哀想だと思ってくれているし
 私も、自分のことを不幸だと思っているわ。」

「翼がないから?」

「そう。。。翼がないから。」

女の子は、しばらく黙って
何かを考えているようでした

そして。。。
急ににっこり笑って
こんなことを言いました

「ちょっと、家に寄って行かない?
 美味しいアップルパイを焼いたのよ
 天使さんは、アップルパイ。。。好きかしら?」

「ありがとう。
 私、アップルパイ。。。大好きよ
 時々、おかあさんが焼いてくれるの。。。
 当分、家には帰れそうもないし
 ごちそうになろうかな。。。
 あと。。。天使さんじゃなくって
 ポポって呼んでね。。。」

「よかった。。。
 じゃあ、ポポちゃん。。。
 私のことは、こはるって呼んでね。」


こはるちゃんの家は。。。
真っ赤なお屋根の家で
庭には、たくさんの可愛らしい花が咲いていました

MB900382585.JPG

「素敵なおうちね。」

ポポがそう言うと
こはるちゃんは

「ありがとう。
 自分でも気に入っているのよ。」

と答えました

「ポポちゃん、我が家へようこそ
 さぁどうぞ。。。」

こはるちゃんがそう言いながら
玄関のドアを開けたとき

優しい風が。。。
そよそよと吹いて
花々がゆっくり揺れました

「いらっしゃい。。。」

その花たちの言葉にならない声が
ポポには聞こえてきます

さぁ。。。
素敵なティータイムのはじまりです

こはるちゃんのアップルパイは
それはもう、美味しくて。。。
MB900413418.JPG

出された紅茶の香りは
幸せの香りがして
MB900387162.JPG

こはるちゃんの家は。。。もしかしたら
天使の国より天国に近いところになるんじゃないかしら

と思うくらい。。。

素敵な素敵なティータイムです

「ポポちゃん。。。
 実は、私ね。。。
 大きくなったら、パティシエになりたいの。
 美味しいケーキやお菓子をたくさん作って
 食べてくれる人を笑顔にするのが私の夢。。。」

「こはるちゃんなら、きっと大丈夫。。。
 だって、こんなに美味しいアップルパイ。。。
 初めて食べたわ。
 アップルパイでこんなに幸せになれるなんて
 今まで、知らなかった。。。」

「ポポちゃんにそう言ってもらえると
 なんだか、夢が叶いそうな気がしてくるわ。」

「もちろんよ。。。信じなさい。
 絶対叶うわ。
 こう見えても。。。私は天使よ。」

「あっ。。。そっか。
 天使に太鼓判を押してもらったなら
 大丈夫かも。。。」

ポポとこはるちゃんは。。。
二人で顔を見合わせて
笑いました

その時。。。

玄関のドアの開きました

「ただいま。こはる姉さん。。。
 お客様?」

「おかえり。。。さとし
 ちょうどよかった
 今、アップルパイでお茶してたの
 彼女は、ポポちゃん。。。
 なんと、天使なのよ。
 翼はないけどね。
 ポポちゃん、弟のさとしよ。」

こはるちゃんにそう言われて
ポポは、玄関の方へ振り返りました

そこには一人の少年が
飛び切りの笑顔で立って。。。

いや。。。

座っていました

MB900233195.JPG

えっ。。。何?

ポポは、言葉を失います
ポポのそんな姿を見て
こはるちゃんがゆっくり話を始めました

「あのね。。。
 さとしは、小さい頃事故にあって
 足が不自由になったの
 だから、車椅子を使ってる。」

「歩けないの?」

「そう。。。歩けないの。
 でもね。。。それは不幸だってことじゃないのよ
 ポポちゃんを家に招待したのは
 このアップルパイを食べてほしかったのと
 もうひとつ。。。
 さとしに会ってほしかったからなの。」

ポポの頭の中は。。。
いろんな想いがかけめぐります

翼がない。。。

ポポは、それだけで世界中の不幸を背負い込んだ気分で
ずっと暮らしてきました。。。
今朝の今朝まで
私はなんて、不幸なんだろうと。。。

でも、目の前にいるさとしというこの少年は
翼がないだけじゃない

歩くこともできない

立つことすら。。。

なのに。。。
なのに。。。
なのに。。。

この笑顔はなんなんだろう。。。

まるで、この世界中の幸せは
全部僕のものだよ。。。と言っているみたいな
幸せそうな。。。飛び切りの笑顔

何をどうすれば
この境遇で。。。。こんな笑顔になれるのか

ポポは、それをとても知りたくなりました

「さとしはね。。。
 歩くことは出来ないけれど
 とってもすごい才能があってね。。。
 それは、絵を描くことなの
 さとしの描いた絵には。。。
 なんて言えばいいんだろう
 命が。。。
 そうよ。この言葉がぴったりだわ
 さとしの描いた絵には
 命が宿るの。。。
 
 目に見えない風さえ
 さとしは描くことができる
 描くだけじゃない
 その絵を見た人にその風を
 感じさせることができる

 そして。。。
 その風の中に。。。
 幸せを溶け込ませて
 見た人の心の中を一瞬に吹き抜け
 幸せにすることが出来る

 さとしは、そんな絵を描ける子供なの。。。
 しかも、誰かを幸せにすることで
 さとし自身も幸せになっていってる
 だからね。。。
 さとしは、歩けないけど
 最高に幸せな男の子なのよ。。。」

「こはる姉さん。。。
 ちょっと、ほめ過ぎ。。。」

さとしくんは、頬を赤くしながら笑いました

その笑顔からまた、飛び切りの幸せがこぼれます

「あら。。。ほんとのことよ。
 ねぇ、さとし
 ポポちゃんにもあなたの絵
 見せてあげてくれるかしら。」

こはるちゃんがそう言うと

「もちろんいいさ。」

と言いながら
さとしくんは、車椅子の自分の膝の上にある
一冊のスケッチブックをポポに手渡しました

ポポは、スケッチブックを受け取り
そっと。。。中を覗きます

すると、どうでしょう。。。

一瞬に優しい風が吹いて。。。
幸せな気持ちがポポを包み込んだのです

そこには。。。

広い草原
そこに咲く。。。色とりどりの花々
遠くにそびえる大きな一本の樹が描かれています

そして。。。

スケッチブックの中には。。。
確かに風が吹いているのです。。。
心を幸せに染める風が。。。

MB900433163.JPG

人間って。。。
人間って。。。凄い

翼もないのに
こんなに凄いことが出来るんだ

呆然としているポポに
こはるちゃんが声をかけます

「ポポちゃんは、翼の生えてこない不幸ばかり
 見ているみたいだったから。。。
 知ってほしかったの。。。
 ちょっと視線を変えて
 自分自身をしっかり見たら
 きっと見つかると思うのよ
 幸せの形は、ひとつじゃない
 私にとっては。。。お菓子作り
 さとしにとっては。。。絵を描くこと

 ポポちゃんには、ポポちゃんの
 何かがあると思うのよね。。。」

ポポは今まで。。。
翼のことばかりを気にして
飛べないことばかりを悲しんで
他のことは、あまり考えなくなっていました。。。

でも、思い出しました。。。

もっと小さい頃
まだ、クラスメートたちにも翼がなくて
翼のないことなど気にならなかった頃のこと

ポポは。。。
ブーケを作るのが得意でした
クラスで一番

天使の作るブーケには
特別な力があります

それを持つ人を幸せに出来るという
素敵な力です

ポポの作るブーケは
持つ人の心を
七色の幸せで彩ることができるのです。。。

「ちょっと待っていて。。。
 お庭のお花。。。少しもらうね。」

こはるちゃんとさとしくんにそう言って
ポポは、庭へ飛び出しました。。。

しばらくして。。。
ポポが戻ってきました

手には。。。お花のブーケが二つ

MB900237340.JPG

「これは。。。こはるちゃんに
 もうひとつは。。。さとしくんに」

ブーケを受け取ったこはるちゃんとさとしくんは
とたんに。。。七色の幸せに包まれました

「ポポちゃん。。。
 凄い。。。凄いよこれ。。。
 ごめんなさい。。。
 私、今までちょっとだけ
 ポポちゃんが天使だってこと疑ってたの
 だって、こんなところに天使がいるなんて思わないもの
 でも。。。今、はっきりとわかった
 翼がなくても
 ポポちゃんは、すっごい天使なんだね。」

こはるちゃんもさとしくんもとても喜んでくれています
二人の笑顔に
ポポは、大満足
なんだか、自信もわいてきました

「私。。。もう翼がなくても
 自分が不幸だなんて思わないことにする
 だって。。。
 私には、ブーケが作れるもの
 天使の国で一番の
 ブーケ職人になるわ。」

「ポポちゃんなら、絶対なれるわ。」

「僕もそう思う。。。」

「ありがとう。。。
 こはるちゃん、さとしくん。」

その時。。。

「ポポ~
 どこにいるの~」

空の高いところからおかあさんの声がしました

「あっ。。。おかあさんだ
 おかあさんが、私を探してくれているんだわ。
 それじゃあ。。。行くね
 私も頑張るから、二人も頑張って。」

「うん。。。夢に向かってね。」

「僕もがんばるよ。」

三人は、しっかり手を握り合い
そして。。。
ポポは、こはるちゃんの家をあとにしました


image4392.gif

「おかあさ~ん
 私はここよ!!!」

空に向かってそう叫ぶと
すぐにおかあさんはやってきてくれました

「ポポ。。。よかった
 心配したのよ。」

「心配かけてごめんなさい。
 でもね。。。いろんなことがあったのよ。
 何から話していいのかわからないくらい
 たくさん。。。」

「ともかく、無事でよかったわ。」

「うん。。。それとね
 人間のお友達が出来たの。
 それでね。。。
 私、翼がなくてももう平気。。。」

「それはよかったわね。。。
 後でゆっくり聞かせてね。
 とりあえず今は、早く帰りましょう。
 じゃあ、行くわよ。」

そう言いながら
おかあさんは、ポポをそっと抱きかかえました

あらっ?

そう。。。ふふっ

おかあさんは
ポポを抱きかかえた時
まだ小さいけれど確かにある
二つの背中のふくらみに気づきました

どうやら。。。もうすぐ。。。

ポポの背中にも
天使の翼が生えてくるみたいです。。。

MB900410895.JPG

             おしまい


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屋上 [小さなお話]

すい臓がん

見つかったときには手遅れ
もっとも。。。
初期のすい臓がんを見つけるのは
至難の技
沈黙の臓器

がん告知をされても
特に悲しくなかった
俺の人生。。。
まぁ、そんなものかと思っただけ

そういえば。。。今まで
俺は生きたいと
心から願ったことなど
一度もなかったような気がする

特に死ぬ理由もなかったので
とりあえず、生きている
いつも、そんな気持ちでいた

だから、死ぬことなど怖くない

結婚はしていない
子供もいない
父も母もとっくに亡くなって
天涯孤独
俺がいなくなったところで
世の中の何一つ変わらないさ

とりあえず俺は、仕事をやめた

老後のための貯金があった
決して多いわけでもないが
老後がないなら
無理して、仕事をすることはない程度の蓄えはある

だが、仕事がないと時間を持て余す
俺の唯一の趣味
大人になってから始めたピアノ。。。
いつか、「トライメライ」が弾けるようになりたかった

あの美しい旋律が好きだ

今から必死に練習したら
死ぬまでには弾けるようになるだろうか。。。

ふとそんなことを考えた

だが。。。やめた

たとえ弾けるようになったとしても
誰に聴かせるまもなく
俺は死ぬだろう。。。

何もかも。。。無駄に思えた

そんなとき。。。
あの地震と津波

友人の妻が津波で流され亡くなった
遺体は、幸いにもすぐに見つかったらしい

葬式の晩
友人は言った

「ウチのやつ。。。
 きっと、びっくりしたと思うわ
 なんの準備も覚悟もないまま
 突然、死ぬことになってしまって
 心残りもたくさんあったろうに

 でも、まだ。。。
 遺体さえ見つからない人も多い
 その人たちに比べたら
 ウチのやつは幸せな方なんだろうな

 お前も病気で辛いかもしれないが
 まだ、奇跡が起こらないって決まったわけじゃない
 医学は日々、進歩しているし。。。
 それに今、お前はまだ生きている
 いろいろやり残したことも出来るだろ
 突然、何の前触れもなく
 命を失ったウチのやつに比べたら。。。
 お前のほうが幸せかもしれない
 なぁ。。。そんなふうに前向きに考えて
 生きてくれや」

やり残したこと?
自分がいなくなるのに
何をしろっていうのか。。。

友人は友人なりに
俺の心配をしてくれているのはわかる

しかし。。。遅かれ早かれ
俺は友人の妻と同じになる

何にもなくなるんだ

友人が妻の遺影に
手を合わせて泣いていた

その姿を見ていて
ふと思った

あぁ。。。彼女は。。。
確かに死んだかもしれないが
友人の心の中にちゃんといる
記憶として
思い出として
死んだ後もちゃんと存在している

それが。。。妙に羨ましく思えた

そして。。。
俺が死んだら
俺は。。。ただ。。。消えるだけ
誰かの心の中に。。。
俺も自分を残したい。。。

そんなことを思ってしまったんだ


それから、俺は。。。
被災地のボランティアに参加した

やることはいくらでもあった
悲惨な現場も危険な場所でも
進んで仕事を引き受けた

だって。。。
俺に怖いものなんかない
怖がる必要もないのだ
どうせ。。。死んでいくのだから

そうしているうちに
沢山、感謝されるようになった
これまで、感謝なんて言葉に
縁がなかったこの俺が。。。

大勢の人に
自分のことより人のために
限られた時間を生きる姿勢が
素晴らしいと褒めてさえもらえた

そう。。。俺は頑張ったさ

動けなくなって。。。
この病院に再入院するまで
がむしゃらに働いたよ

そして。。。今。。。
病院に毎日手紙が届く

『早く元気になってください
 そして、また。。。会いましょう
 本当にあなたには感謝しています
 あなたは命の恩人です』

そんなことが書かれてある手紙を
何通も何通も
俺は病院の屋上で
一人で読んだ


どれもこれも
俺を必要としてくれたり
俺の命を惜しんでくれたり

俺が死んだら
この人たちは
間違いなく悲しんでくれるだろう
俺を覚えていてくれるだろう

確かにそれが
俺の望みだった

俺はやり残したことを
すべてやり遂げた
もう何の悔いもなく
死んでいける。。。はずだった

だが。。。

いやだ。。。いやだ。。。

俺は必要とされている

みんな、俺に生きてくれという

なんで俺が死ななきゃいけない

俺は死にたくない

死ぬのは嫌だ

いやだ。。。いやだ。。。いやだ

俺は。。。
とんでもない間違いを犯したことに
初めて気が付いた

人との繋がりとは
この世との繋がり

それが出来てしまった俺には
死が怖くて仕方ないのだ

生まれて初めて
死の恐怖を知った

こんなに怯えたままで
一瞬だって過ごせるものか

たまらず。。。
張り巡らされた金網を乗り越え

屋上から飛び降りた

地上までのわずかな時間
俺は、心の中で叫び続けていた

生きたい。。。
もっと生きたい。。。と

ハートライン.gif


今回は。。。
ちょっと救いのない話を書いてみました

いろいろ。。。
リハビリ中です

目指せ!!!
スランプ脱出♪

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指切りげんまん [小さなお話]

夕方。。。アニメの時間
私が、ケラケラ笑いながら
テレビを観ていると
横でばぁちゃんが、こんなことを言う

「ワシは水戸黄門が観たい。。。」

(今の時間は、そんなのやってないよ。)

「テレビ局に電話をかけて
 今すぐ、水戸黄門を放送するように
 お願いしてくれんかね。。。」


(そんな事出来ないわよ。。。)

私は深いため息をついた

ますます、ばぁちゃんの我儘は
エスカレートしてきたなぁ。。。

すべてはあの日。。。
今から一か月ほど前の
三月一日の朝
始まった。。。


ライン.gif

三月一日の朝。。。
天気は晴れ

いつも早起きのばぁちゃんが
朝食の時間になっても
部屋から出てこない

ママに言われて
様子を見にいくと
ばぁちゃんはまだ、寝ていた

「ばぁちゃん、朝ごはんだよ。」

私はそう声をかけたが
返事はなかった

「ばぁちゃん、起きてよ。」

さらに声をかけたが
またもや、返事がない。。。

……。

なんだか、おかしい

恐る恐る。。。ばぁちゃんに近づいて
様子をうかがう

眠ってるみたいなのに
息をしていない。。。

布団の中で
ばぁちゃんは。。。死んでいたのだ

あまりに突然の出来事で
とても信じられなかった


「穏やかな顔してるよ。
 きっと、あまり苦しまなかっただろう
 よかったな。。。かあさん。。。」

パパは、動かないばぁちゃんに
そう語りかける

あんな寂しそうなパパを見たのは
生まれて初めてだった。。。

でも、あの時はまさか
もっともっと信じられない事が起こるなんて
思いもしなかった


それは。。。
ばぁちゃんのお葬式が終わった次の日
家族3人。。。
家で食事をしていた時に起こった

なんと。。。
ばぁちゃんが
まるで、生きてる時と同じように
私の前に現れたのだ

「ばぁちゃん、生きてたの?」

思わず私が、そう叫んだので
パパとママはびっくりして
私のほうを見た。。。

ばぁちゃんは、私の隣に立っている

「琴音。。。あなた、大丈夫?
 ばぁちゃんは亡くなったのよ。」
 そしてそこに。。。いるわ。
 骨だけになっちゃったけど。。。」

ママは、ばぁちゃんの骨壺のほうを
静かに見つめた

その目には、うっすら涙が浮かんでいる
 
 「琴音はばぁちゃん子だったからな
 ショックなのはわかるが。。。
 頼むから、『私には、今ここにばぁちゃんが見えるのよ。』
 なんてこと言わないでくれよ。。。」

。。。ん???

見えないの???

私は、私の隣に立っているばぁちゃんを
じっと見つめた

確かに。。。いる。。。よね

どうやら
ばぁちゃんの姿は
パパやママには見えないらしい

私にだけ。。。見えるって
これって、幻覚?
それとも。。。
これが噂の霊能力ってやつ???

私にしか見えていない

ばぁちゃんもそのことを
よくわかっているらしく
やたら私だけに
話しかけてくる

「ワシのご飯はどこじゃ?」

(ばぁちゃんの分は、あっち。。。)

私はばぁちゃんの祭壇におかれている
影膳に視線を向ける

ばぁちゃんは頷き
祭壇のほうへ歩いていった

声に出さなくても
心で思うだけで
ばぁちゃんに意思は伝わるらしい

ほっ。。。助かった

そうでなければ。。。
パパやママにどう思われることか。。。

パパもママも幽霊など信じないタイプだから
きっと。。。私は
病院へ連れて行かれてしまうだろう


そんなことを思いながら
ばぁちゃんの姿を目で追っていた

すると。。。
影膳の前に立ったばぁちゃんが
こんなことを呟く

「ワシは、肉が食べたい。。。」

(肉???
 ばぁちゃんのご飯はお供え物だよ。
 殺生禁止の精進料理だから無理だって。。。
 ばぁちゃん。。。お願い
 我儘言わないでよ。。。

 だってもうばぁちゃんは。。。
 死んでるんだよ!!!)

ばぁちゃんは不満そうな顔をして
それでも、ご飯を食べ始めた

確かに食べているのに
ばぁちゃんの目の前にある
ご飯は減らない。。。

ちょっと、不思議。。。だった

MB900429021.JPG

次の日の夕食の時も
こんなことがあった

「今日、テレビの料理番組で覚えたのよ。」

。。。とママ

出てきた料理は、マグロのカルパッチョ
すごく美味しそうに出来ている

「わぁ、とっても美味しそう。」

私の言葉にママは嬉しそうだった

でも、ばぁちゃんは気に入らないらしい

「刺身はわさびと醤油で食べるのが
 ワシは好きなんじゃが。」

(だから、ばぁちゃんは死んでるんだってば。
 死んだ人の口に合わせて夕飯は作らないでしょ!!!)

私は心の中で
ばぁちゃんにそう言った
すると。。。
ばぁちゃんがこんなことを言う

「ワシは死んどりゃせん。。。
 まだ、約束を果たせんでいる。
 だから今は。。。
 殺されても死なんわい。」

(ばあちゃんがどう思ってようと
 本当に死んでるんだって。
 孫の言うことが信じられないの?

 それに。。。果たしてない約束って???
 いったい誰とどんな約束をしたの???)

ばぁちゃんは答えない。。。

答えの代わりに歌が聴こえた

♪指切りげんまん
 嘘ついたら針千本飲まぁす♪

って。。。シカトしたね。。。はぁー。

それでも。。。
もしかしたら答えてくれるかも
そう思って、しばらく答えを待った
ようやく、ばぁちゃんの口から出た言葉は

「ワシの眼鏡がないのじゃが。。。」

えっ。。。もしかして
完全にはぐらかされた?

まっ、いいか

はいはい。。。
今度は眼鏡ね。。。

(えーっと眼鏡は。。。
 ばぁちゃんを荼毘にふすとき
 お棺に一緒に入れちゃったよ。)

 「。。。ということは、燃やされちゃったってことかい?
 勝手にそんなことされちゃ。。。困るわい。」

ばぁちゃん。。。かなり怒っている
なんだか昨日より
もっと我儘になっている気がした

まるで、駄々ばかりこねる子供みたい。。。

生きてる頃は
控えめで。。。
文句なんか言ったことない人だった。。。

バカは死ななきゃ治らない
というのは聞いたことがあるけど

我儘は。。。死ぬと
よりひどくなるなんて話
今まで私は。。。
聞いたことなかった

ライン.gif

そんな毎日がしばらく続いた
ばぁちゃんの我儘にも
だいぶ慣れてきたころ

庭にある桜の木が
満開になった

「ばあちゃん
 見て!!!
 桜が満開だよ。。。」

なんだか嬉しくて
つい声を出して叫んでしまった


パパとママが留守でよかったぁ
病院行きは。。。免れた
今度から、気をつけなきゃね。。。

それから。。。
ばぁちゃんと並んで
お花見をする

そういえば、去年もここで
お花見したよね。。。

桜が咲くのを
いつも一番楽しみにしていたばぁちゃん

ばぁちゃんにとって
この桜は特別なものらしい
理由は知らないけど
ずっとばぁちゃんを見ていればわかる
ばぁちゃんが、この桜の木に
特別な想いを持っているってこと
私は、ばぁちゃんがこの桜を愛でる時の
優しく。。。そしてなぜか
ちょっと切なそうな表情が好きだった

だから、毎年。。。
こうして、ばぁちゃんと花見をするのは
私が小さい頃からの年中行事のひとつ

あっ。。。でも。。。
去年までのばぁちゃんは
ちゃんと生きてたけどね。。。

ばぁちゃんと一年ぶりの花見を
楽しんでいると
庭の桜の木の向こうから
ふっと一人の男が現れた

なぜか。。。軍服を着ている

イマドキ
この姿で現れるってことは

えっ、この人も幽霊???

また、幽霊が増えるの???
勘弁してよ
パパやママに悟られないように
相手をするのは
ばぁちゃんだけでも大変なのに。。。

私はとっさにそう思った

「遅くなってごめんな。」

その軍人さんの幽霊は
そう言って笑った

遅くなった?
どういうことだろう

(ねぇ。。。ばぁちゃん
 心当たりある???)

私は隣にいるばぁちゃんを見た

ばぁちゃんは。。。
その軍人さんの幽霊を
じっと見つめていた

そして、叫んだ

「とうちゃん!!!
 やっと来てくれたん?
 ずっと待っとったよ
 来てくれてうれしいわぁ。」

とうちゃん???って
あの軍人さんがばぁちゃんのおとうさんなの?

ばぁちゃんは軍人さんの元へ駆け寄り
その手をしっかり繋ぐ

すると。。。その瞬間
ばぁちゃんが、小さな女の子になった

不思議な光景だった

嬉しそうに笑う。。。
小さな女の子がそこにいる

どういうこと?

「待たせたね。。。
 約束を守りに来たよ
 一緒にお花見しようって
 指切りげんまんしたもんな
 随分と時間がかかったけど
 やっと一緒に桜が見られる。」

満開の桜の木の下で

軍人さんと小さな女の子が
手を繋いで
桜を見上げている

まるで。。。
戦争映画のワンシーンのようだ

でも。。。あれは。。。
小さくなってるけど
私のばぁちゃん。。。だよね

。。。のはず。。。

しばらく。。。
静かな時が流れた

やがて、女の子は
軍人さんの手を離し
私の元に近づいてきて
こんなことを言った

「お別れの時が来たみたい。
 今まで、本当にありがとう。。。
 琴ちゃん。。。
 幸せになりなさいね。」

それだけ言うと
軍人さんのところへ戻り
再び、しっかりと手を繋いだ

あぁ。。。やっぱり。。。
あの子がばぁちゃんなんだね。。。

呆然としている私の前から

小さな女の子になったばぁちゃんと
軍人さんの姿は
ゆっくり、ゆっくり。。。消えて行った

何が起こったのか
よくわからなかった

でも、わかっていることが
ひとつだけある。。。


ばぁちゃんとは
これでほんとの
さよならなんだね。。。

ライン.gif

その日。。。
仕事から帰ってきたパパに聞いた

「ばぁちゃんのお父さんて
 軍人さんだったの?」

「えっ?。。。じいさんのことか?
 パパも実際には会ったことはない。
 だから、遺影の写真でしか知らないが
 ばぁちゃんが小さい頃
 戦争に行って。。。
 戦死をしてしまったらしい

 そういえば。。。昔
 パパのおばさん。。。
 つまり、ばぁちゃんのお姉さんに
 こんな話を聞いたことがある。
 戦死の知らせが届いても
 ばぁちゃんはじいさんが死んだことを
 しばらく信じなかったって。
 
 庭の桜が咲いたら
 一緒に花見をしようと
 指切りげんまんしたからって。
 
 とうちゃんが、自分との約束を破るなんてこと
 絶対ないからって。
 
 でも、守れない約束もあるんだよな。
 娘とそんな約束をしていたんじゃ
 じいさんも最期まで心残りだったろうけど
 死んでしまったら、どうしようもない。。。」

私は。。。
仏壇においてある
私にとっては、曾じぃちゃんの遺影を
改めてまじまじと見た。。。
思えば、今まで。。。ちゃんと遺影を見る
なんてことはしたことがなかったなぁ

その写真は
出征直前に撮ったのだろうか
軍服姿の写真だった

そして、その人は紛れもなく。。。
さっき、桜の木の向こうから現れた
あの軍人さんだったのだ

私は、ようやく。。。
すべてを理解した。。。

ばぁちゃんは、待っていたんだ
自分の父親が約束を守りに
帰ってくるのを。。。

戦死の知らせを聞いた後も
きっと心のどこかで
待ち続けていたんだね

そして。。。今日
約束は果たされた

そうなんだよね。。。

ばぁちゃんが曾じいちゃんと
同じ世界の人になったから
果たせた約束
。。。なのかもしれない

いろんなことが
わかった気がした。。。

「あのね。。。
 時間はかかったけど
 曾じぃちゃんは、ばぁちゃんとの
 約束を守ったんだよ。
 たぶん。。。」

私はつい、そんなことを口走ってしまった

「琴音?。。。おまえ、何言ってるんだ?」

パパが、不思議そうな顔をする

「うぅん。。。何でもない。」

慌てて否定。。。
危ない危ない。。。
病院行きになるところだった

話してもとても
信じてはもらえないだろう

パパは、幽霊を信じないタイプ。。。だから

でも。。。
私はちゃんと知っている
私はちゃんと見ていた

それだけで、いい気がした

ばぁちゃん。。。
約束の桜。。。
見られてよかったね

死んだあと
あの控えめなばぁちゃんが
我儘を言うようになったのは
もしかしたら。。。ばぁちゃんの心が
だんだん、子供に
戻っていったからなのかもしれない

桜の満開の日に
もう一度。。。
父親と出会うために

これからは。。。
子供に返って
曾じいちゃんに思いきり甘えたらいい

そんなふうに思った

どんなに我儘言っても。。。
きっと笑って許してくれるよ
こんなに長い間
待ち続けていた大切な娘の
小さな小さな我儘。。。なら。。。


庭の桜はたわわに咲き。。。
いよいよ、春本番

ばぁちゃんのいない春は
ちょっと寂しいけど

でも、私は大丈夫

だって。。。ばぁちゃん
あんなにうれしそうに笑っていたもん

お父さんとしっかり手を繋いでさ

寂しいのくらい我慢しなきゃね
泣いたりしないよ

それでも私は
ちょっと泣きそうになって
涙がこぼれないように
庭の桜の木をそっと見上げた

そしていつもみたいに
心の中でつぶやいた
もう、ばぁちゃんに伝わるかどうかは
わからないけど。。。

(ばぁちゃん。。。
 私、約束するよ
 いつか、必ず幸せになる。
 指切りげんまん。。。ね。)

桜の向こうから
ばぁちゃんが歌っている声が
聴こえたような気がした

MB900445280.JPG

♪指切りげんまん
 嘘ついたら針千本飲ぉーます♪

(指切った♪)
                 了

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ちあきさん [小さなお話]

指紋を照合しろとか
DNA鑑定をしろとか

そんな、難しいことは言ってない

あれほど大きなヒントを
わざわざ残してきたのに

なんで。。。わかんないのかな?

それも。。。
あんなに珍しいものなんだから
すぐ、アシがつくはず

国家的な搜索機関が動いているでしょ
それでも、見つからないなんて
信じられないわ。。。


・・・・・・。

。。。っと
いつまでもこんなこと
言っていても仕方ないわね

もう、いいかげん
待つことにもくたびれてしまった。。。


○  ○  ○


「また、あのおばあちゃん
 一人でブツブツ何か言ってるわね。
 最近、認知症がだいぶ進んできたみたい。
 ちゃんとフォローしてあげましょうね。」

職場の先輩。。。
ちあきさんがアドバイスをくれる

「はい。。。充分、気を付けます。」

私はそう答えて
庭で日向ぼっこをしているおばあちゃんを見つめた



ここは、とある。。。特別養護老人ホーム
陽だまりの中、車椅子に座って。。。
ブツブツと独り言を言っているのは
先月、入所したばかりのおばあちゃん
あのおばあちゃんは。。。
私の担当なのだ


おばあちゃんは始終。。。
独り言を言っている

ここに来るまでは、一人暮らし

結婚はしていなかったらしい
昔は、姉妹で暮らしていて
そのお姉さんたちは。。。
もう、すでに亡くなってしまっている

ここに来てから
何度もいろいろ話しかけているけれど
いつも。。。
訳の分からないことを呟くばかり

証拠を残してきた。。。とか
なぜ、探せないのか。。。とか

まるで、人を寄せつけない感じ
推理小説が好きだったのかもしれない
自分がルパンのような怪盗だと思い込んでいるのかな

認知症はだいぶ。。。
進んでいるようだった

ここには、いろんなタイプのお年寄りがいる
そして毎日、いろんな事件が起こる

先日も、警察がこのホームを調べに来た

入所されているおじいちゃんが

「人を殺してしまいました。」
MB900013118.JPG

と言って
警察に自首してきたそうだ

もちろん。。。
人など殺していない

テレビのサスペンスドラマを観ているうちに
頭の中で自分と犯人の区別が。。。
つかなくなってしまったのだろう

「事情は、分かっていますが
 一応念のため。。。
 中を調べさせていただきます。」

そう言って、警察が
ホームの中まで入ってきた時には
私は少々、驚いてしまった

「こんなこと。。。日常茶飯事。
 もっと、びっくりすることがたくさんあるわ。
 まぁ。。。ゆっくり慣れていけばいいのよ。」

ちあきさんは、いつも私に優しく仕事を教えてくれる
頼りになる先輩だ。。。

ちあきさんがいてくれるから
ここに入って。。。まだ、日の浅い私だけど
精一杯やろうって気になる

それにしても。。。
身寄りのないあのおばあちゃん。。。
最愛のお姉さんたちも亡くなって
面会に来る人もない

さみしい晩年。。。だなぁ

「あの。。。
 ちょっとお尋ねしますが
 ここに。。。新田さんという方はいらっしゃいますか?」

後ろからそう声をかけられた
振り向くと。。。
品の良いおじいさんがそこに立っていた

「新田さんですか?
 それなら、ほら。。。
 あそこにいらっしゃいますよ。」

私は、庭で日向ぼっこをしている車椅子の
あのおばあちゃんを指差しながら
そう答えた

「ご面会の方ですか?」

「はい。。。
 彼女をずっと探してたんです。」

「それでは、ちょっと呼んできますね。
 ここでお待ちください。」

「はい、ありがとうございます。」

そのおじいさんは。。。にっこり笑って
頭を下げる

その姿は。。。
どことなく気品が漂っていた

MB900331656.JPG

おばあちゃんを庭から
おじいさんの待つラウンジに連れてくる

すると。。。
おじいさんを見るなり
おばあちゃんが怒鳴り出した

「いったい、どれだけ待ったと思ってるの?
 どう考えたって遅すぎるわよ。
 どんな思いで。。。今日まで暮らしていたのか
 あなたにわかる?」

「すみません。。。
 お待たせしてしまって
 でも、ようやく。。。
 あなたを探し出せました。
 よかった。。。
 どうか。。。どうか
 結婚してください。」


。。。えっ???
まさかの。。。プロポーズなの?

私は、急に始まった驚きの展開に
言葉も出なかった

事情はよくわからなかったが

このおじいさん。。。
おばあちゃんをずっと探していたって言ってたもの
そこにはきっと
ずっごいロマンスがあったに違いない

おばあちゃん。。。
なかなかやるね

そんなことを思っていると
おばあちゃんは。。。
今度は力のない声で
こう答える

「結婚?
 今更、無理よ。。。
 私はもう、こんなに歳をとってしまって
 そんな力は残ってないわ。
 結婚するには。。。パワーがいるでしょ。」

「大丈夫。。
 ちゃんと手は打ってあります。
 ほら。。。彼女を覚えていますか?」

いつのまにか
おじいさんの後ろに
ひとりの女性が立っていた

その女性には。。。
どこか見覚えがある

あれは。。。
えっと。。。
う~ん。。。

私は、目をこすって
もう一度。。。よぉ~く見た

思い出した!!!

そうだそうだ
その女性は。。。
どこからどう見ても


。。。魔法使いのおばあさんだ!!!

自分でも、変なことを言っているのはよくわかっている
でも。。。
小さい頃から
私が頭の中で描いていた
魔法使いのおばあさんそのものなのだ

「あっ。。。あなたは!!!
 あの時は、大変お世話になりました。」

車椅子のおばあちゃんは、その女性と
どうやら、知り合いらしい。。。

「おひさしぶりね。。。
 実は。。。
 あなたにどうしても
 謝らなければならないことがあるの。
 ほら、あの日
 12時の鐘の音とともに
 カボチャの馬車を消したでしょ。
 その時、うっかり。。。
 あなたが残したガラスの靴も消しちゃったのよね。
 ごめんなさい。
 悪気はなかったのよ。

MB900233713.JPG
 
 ただ、そのせいで。。。この王子さま。。。
 あなたを探す術をなくしてしまってね。。。
 それで、あなたを探し出すのに
 こんなに時間がかかったってわけ。
 だから、王子さまを責めないであげて。

 みんな、私のうっかりミスのせい。
 つぐないとして。。。
 あなたと王子さまを
 若返らせてあげることにしたわ。
 それで、どうか許してね。

 それにしても。。。
 あなた。。。
 なんでリアルの世界まで逃げてきたの?
 ちょっと、遠すぎるでしょ。」

「だって。。。
 すぐ見つかっちゃうんじゃ
 ありがた味がないかなと思って。。。
 絵本の中の世界は、意外と狭いし。。。
 でも、ずっと後悔してました。
 なかなか、見つけてもらえなかったから。。。」

この人たち。。。何を言っているんだろう?
みんなで私をからかってるの?

それとも。。。
集団で、認知症が進んでいるの?

ぽかんと口を開けて
私は、その様子を見ていた

車椅子のおばあちゃんは。。。
そんな私にこんなことを言う

「短い間だったけど
 お世話になったわね。。。
 聞いていたから、もうわかっていると思うけど
 私。。。
 ここから出ていくことになったわ。
 
 いろいろ気を遣ってくれてありがとう。
 あなたは、きっといいヘルパーさんになるわよ。
 頑張ってね。。。」

私の頭の中は。。。
ただただ、真っ白で。。。
固まってしまっていて。。。
なんの言葉も返せなかった

「それじゃ、そろそろ絵本の中へ帰りましょうか。。。
 若返って。。。永遠に幸せに暮らし始めるところから
 やり直しですね。。。
 永遠は、長いですよ。。。末永くよろしくお願いします。
 僕の。。。シンデレラ。。。」

シッ。。。シンデレラ???

あの品の良いおじいさんが
真顔でこんなことを言うと
なんだか。。。真実味を帯びてくるから不思議だ

でも。。。
こんなことあるはずが。。。

私はなおも。。。
固まっていた

すると。。。
魔法使いのおばあさん。。。
手にもった杖をふる。。。

「ビビディ・バビディ・ブー」

ブー。。。ってか。
この場合。。。そうだよね。。。ブーだよね。。。

次の瞬間
私の担当だった車椅子のおばあちゃんと
品の良いおじいさん
それと。。。
どっからどうみても
他に例えようのない
魔法使いのおばあさんの3人が
私の目の前から消えたのは

。。。言うまでもない


MB900298845.JPG
3人が消えたあとには

一冊の絵本が落ちていた

MB900290502.JPG

タイトルは、もちろん。。。

「シンデレラ」

そんなぁ~。。。

○  ○  ○

どれだけ時間が経ったのだろう。。。

まだ、呆然としている私に
ちあきさんが声をかけてくれた

「ぼーっとしちゃって
 いったいどうしたの?」

私はそこで、やっと我に帰る

あまりのことに
びっくりしてしまって
泣きながら
今起こったすべてを
ちあきさんに話した

信じてもらえないだろうと
どこかで、覚悟しながら

話を聞き終わると
ちあきさんは優しい声でこう言った

「だからさ。。。前にも言ったでしょ。
 ここにはびっくりすることがたくさんあるって。
 考えてもごらんなさい。
 ここにいるお年寄りたちの人生の時間
 全部集めたら。。。どれだけの時間になると思う?
 その時間たちがすべて
 この特別養護老人ホームには
 詰まっているのよ。
 少々。。。不思議なことが起こったって当たり前。

 起こらない方が不思議なくらい。
 だからね。。。
 もう泣かないで。。。
 
 そっか。。。あのおばあちゃん。
 シンデレラだったのね。
 どおりで。。。浮き世離れしてると思ったわ。
 あっ。。。その絵本
 本棚に戻しておいてね。」

MB900192373.JPG

ちあきさんは、それだけ言うと
さっさと自分の仕事に戻っていった

なんにもなかったような
平気な顔をして

さっすが ちあきさん!!!

彼女は本当に。。。
頼れる先輩だ

ちあきさんがいてくれるから
ここに入って。。。まだ、日の浅い私だけど
精一杯やろうって気になる。。。のだ

               おしまい

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バーテンダー [小さなお話]

色彩のブルース
  ↑↑
大好きなエゴ・ラッピンの「色彩のブルース」。。。まずは。。。聴いてみてください。


  「バーテンダー」

「珍しいものを持ってきたよ
 今夜はこれを飲ませてくれないか?」

最近見つけたお気に入りのBar。。。

この店の照明は、仄かに暗く
疲れた体に優しい

バーテンダーは。。。
無口な男だった
俺の差し出した酒瓶を黙って受け取る

「それ。。。バーボンっていう酒
 よかったら、君も一緒に飲まないか?」

愛想のないバーテンダーだから
俺の提案になんかノリはしないだろうと思っていたが
意外にも彼は、ロックグラスを二つ用意した

「なんだ。。。
 君、本当はイケる口なんだね。
 そうだよなぁ。。。
 バーテンダーなんてやってるくらいだものな。」

グラスに注がれたバーボンは
琥珀に光り、とても美しい

飲み物というよりは。。。
アートに近い気がした

「乾杯!」

カチンとグラスを合わせて
バーボンを口に含む

すぐに感じる熱さに似た刺激

度数の高い酒らしい

「これは、効くね。。。」

そう言いながら、バーテンダーを見る
彼は、静かに。。。
ロックグラスのバーボンを口に流し込んでいた
一口。。。二口。。。そして三口。。。
かなり刺激の強い酒なのに
顔色一つ変えない。。。

そっか。。。
やっぱり、思ったとおりだ

俺は、確信した

「持ち込みの酒なんて
 悪かったな
 わがままついでに
 持ち込みの音楽をかけてもいいか。」

「どうぞ。」

俺は、ステレオに音楽データを転送した

曲名は。。。
「色彩のブルース」

曲が流れ始めると同時に

俺は、バーテンダーの様子を伺う
しばらく。。。時間が止まってしまったような
独特の空間に満たされる

そして、気づくと
彼は。。。泣いていた

声を殺してうつむいていたが
その頬に伝う涙が
仄かに暗いこの店の照明に照らされて
光るのが見えた

俺は。。。グラスをおき
そっと店を後にする

今夜は、一人にしてやろう。。。

そんなふうに思った


一か月前
この居住区域から20キロ離れた砂漠地帯に
宇宙船が墜落した

すぐに調べにいってみたが
残念ながら、中に宇宙人はいなかった

そこで、液体の入った瓶を見つける
解析の結果。。。酒だった

バーボンという名前らしい

宇宙船は一人用の小さなもので
コンピューター機器もかなり原始的
よくこれで、宇宙を飛んできたな。。。
と感心するほどだった

ノアのはこぶね
1000031

宇宙船にはそう刻まれていた
おそらく、大量に同じような宇宙船があったのだろう

調べていくと他にも
いろいろなことかわかってきた

この宇宙船は。。。
地球という星から飛んできたものだった

あの星は。。。
もうすぐ、寿命を迎える

住人たちは
それを知って
イチかバチかで脱出した

そんなところだろう

宇宙船の中には、写真や雑誌なども残されていた
驚いたことに地球人は。。。
この星の人間と外見上は変わらないようだ

同じような進化の過程を通ってきたと推測出来る

ちょうど、宇宙船が墜落した一か月前
あのバーテンダーはこのBarにやってきた

俺は、このあたりの居住区域を管理する仕事をしている
この辺に新しい住人が増えるという報告は
受けていない
こういうケースは。。。
犯罪者という場合が多いのだが

犯罪者リストには
彼は載っていなかった

それどころか。。。

彼のデータは、この星のメインコンピューターの中に
全く無かったのだ

そんなことは、通常はありえない
そこで、俺はひとつの仮説をたててみた

宇宙船の持ち主が。。。
あのバーテンダーだったら。。。

最初は自分でも
まさか。。。と思った
あんな宇宙船で墜落して
生存の可能性など。。。無いに等しい

だが、遺体はなかった

そこで、今夜。。。
確かめてみたんだ

バーボンと「色彩のブルース」
宇宙船に残るこの品々で

案の定
バーテンダーは。。。
この星にはない酒を
慣れたふうに飲み

この星にはない音楽に
涙を流していた

無口なのは
この星の言葉に
まだ慣れてないせいかもしれない

すべての点が繋がって
線となってゆく
謎は。。。解けたようだ


だが、通報する気はない
俺はあのBarの仄かに暗い照明が好きだ
捜査員たちに荒らされてたまるか

この居住区域のことは
俺が決める。。。それでいいよな。。。

夜空を見上げると
三つの大きな月が今日も赤く光っている


地球という星の音楽は
なかなか魅力的だった。。。
どんな星だったのかな

やっぱりこんな赤い月が昇ったのだろうか

ふとそんなことが気になった

今度、あのバーテンダーに聞いてみよう

また、今夜みたいに
バーボンでも飲みながら

赤い月を眺める俺の頭の中で

「色彩のブルース」が

まだ。。。繰り返し
流れ続けていた。。。

         おしまい


頑張ったんだけど。。。
こんなんでごめん。。。なさい。。。

拙すぎて。。。リンクも貼れない。。。
こっそりUPということで(汗)

次、頑張ります♪

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あいつ [小さなお話]

僕はずっと耐えてきた
僕につきまとうあいつの存在に。。。

ずいぶん前から
あいつは僕につきまとっている

悪霊の類だろうか
それとも。。。
僕の幻覚???


あいつはいつも
とても派手な格好をしている

僕は、渋めのファッションが好きだから
あのセンスはいただけない

でも、まぁ。。。

派手なだけなら我慢もしよう

人にはそれぞれ
好みというものがあるのだから

僕が一番許せないのは
あいつが時々噴出させる
あの謎の液体

MB900438348.JPG

いろんなところから
吹き出てくるんだ

気持ち悪い。。。
不気味すぎる

ある日、夕暮れの公園で
僕が夕日を眺めていると
やっぱりあいつも夕日を眺めていた

MB900293374.JPG

そして。。。
今日もまた

目から。。。
口から。。。
鼻から。。。

不気味な謎の液体がほとばしる

あっ!!!

その液体が
僕の足にかかった

もう我慢できない

僕は、とうとうあいつに向かって
声を張り上げ怒鳴ってしまった

「コノヤロウ
 いい加減にしろ。。。
 僕から。。。離れろ!!!」

あいつは、びっくりして
目を丸くした

ざまあみろ。。。

しばらく沈黙が続く

あいつは、深呼吸を一つして
僕にこう言い放った

「お前こそ。。。いい加減にしろよ
 お前は俺の影なんだぞ
 怒鳴るなんてとんでもない
 そもそも声を出すなんて信じられない
 身の程知らずにもほどがある
 お前は黙って
 俺の歩く後ろをついてくればいいんだ
 
 今日、愛犬のタロが死んだんだ
 静かに泣かせてくれ
 お前になんて、かまってられるか」

。。。えっ。。。

僕は、あいつの影?

そっか。。。

思い出したぞ
そういえば、僕は影だったっけ

最近どうも
物忘れが激しくていけない

どおりで。。。僕は黒一色なわけだ

そっか。。。

それじゃあ、あの液体は
涙ってやつなのか

ふぅ。。。
いろいろ思い出してきたぞ

そっか。。。

タロが死んだのか。。。
あいつ、可愛がっていたもんな

MB900395340.JPG

怒鳴ったりして
悪かったな。。。
許してくれるかな。。。

まぁいいさ

あいつが許してくれなくても
このまま。。。
ダンマリをきめこんでしまおう

大丈夫。。。だって僕は
あいつのただの影なんだから。。。

MB900402179.JPG

       おしまい

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3通の手紙~遺言~ [小さなお話]

MB900441822.JPG

彼が逝った日は
よく晴れた日で
心地よい風が吹き
小鳥の声が聞こえていました

彼は彼の最期に立ち会った誰よりも
少しだけ早く。。。
神様から翼をもらいました

その翼を羽ばたかせて
彼は、とても穏やかに
次の旅へと向かいました

命が終わったその瞬間に始まる。。。
それは、心の旅でした

彼は、もう使わなくなったその肉体と
3通の手紙を
この世に残して逝きました

彼がこの世で愛した。。。
大切な大切に人たちに

MB900287264.JPG

3通の手紙 ~遺言~



~恋人へ~

君と過ごした時間は
とても短かったけれど
君と過ごせた時間は
かけがえのない宝物だよ
この時間を過ごせただけで
生れてきてよかったと思えるんだ
君には本当に、感謝している
愛してくれて、ありがとう。。。

ただ、僕がここから消えた後
僕のことなど忘れておくれ
今はそれが
僕の唯一の願いなんだ
僕のいないこの場所で
それでも、生きていく君に
しっかり前を見つめてほしい
だってさ
君がどんなに振り返ったとしても
もう僕はそこに
いてあげることは出来ないんだから

大丈夫

どんな綺麗な思い出だって
明日の優しさにはかなわない
明日、君を笑顔にするのは
残念だけど、僕じゃない

幸せになってください
僕のことはこれきり。。。
どうか、どうか、忘れてください




~かあさんへ~

僕の幸せを何より優先させてくれた
あなたにひとつお願いがあります
あなたに僕を忘れてと
言っても無理なことでしょう
それならせめて、僕のことで
悲しんだりしないでください
自分を責めたりしないでください

子供のころから幸せだった
あなたの愛に包まれて
今度は僕があなたのことを
幸せにするはずだったのに
叶わなくてごめんなさい

けれど、あなたが思うほど
僕は不幸ではありません
あなたがゆっくり歳をとり
こころゆくまで生きたあと
また、再会できるのですから
それを楽しみに
どうか、どうか、悲しまないで

でも、急いで来なくていいですよ
しばらく一人で旅がしたい
できるだけ。。。ゆっくり来てくださいね
どうぞ、長生きしてください




~友へ~

お前にひとつ、頼みがある
それほど難しいことじゃない
ただ。。。
僕を覚えていてほしい
忘れないでいてほしい
お前にとって僕の記憶は
たいした重荷じゃないだろう
だったら記憶の片隅に
僕をおいてやってくれ
そして、年に一度だけでいい
思い出してくれないだろうか
そうだ、桜の季節がいい
花びらが散るたったひととき。。。
桜吹雪の中にだけ
生きてる僕の姿を
思い描いてくれないか

死んでいくことよりも
なんにもなくなってしまうことが
少しだけ怖いんだ
僕が生きていたことを
ちょっとだけでも残していきたい
こんな弱虫な僕を
笑ってくれていいよ
こんなこと頼んでごめんな
一年にほんの1秒か2秒でいい
お前の時間を僕にくれ
それが、僕の最期の頼みだ

お前にだけは話すけどさ
本当は僕。。。
もっと、生きたい
生きていたかったんだ


ライン.gif



彼が残していった手紙は
彼の想いそのものでした


使わなくなった肉体と
たった3通の手紙だけを残し
彼は旅立っていきました


その日はとてもありふれた
穏やかな一日でした

そんな穏やかな日に旅立てたことを
彼は神様に感謝しました


心だけになった彼は
陽の光を浴びながら
優しい風に吹かれて
小鳥たちに案内されて。。。

MB900233516.JPG

空へ向かって飛び立ったのです

         おしまい

ハートライン.gif


もう、ずっと昔。。。

このお話に似たようなことがありました

ちょっと、お話風に書いてみました

いつか。。。
この題材で小説を書きたいと思っています

もうすぐ。。春。。。
桜の季節がやってきます

また。。。彼を思い出す。。。
そんな季節がやってきます。。。
         
             春待ち りこ

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虹の向こうへ [小さなお話]

MB900023354.JPG

気がつくと虹の始まりの場所に立っていた

「はじめまして」


そう僕に挨拶してきたのは

黒いマントに鎌を持った男
その姿は、まさに。。。死神

MB900250595.JPG

「君は死神?ってことは
 僕は死ぬのか???」

あまりのことに面食らっている僕に
死神は優しい声でこう言った

「びっくりするのも無理はありません
 皆さん、そうですよ
 私は確かに。。。
 死神と呼ばれたりします
 でも、怖がらなくても大丈夫
 あなたを殺しに来たわけではないのですから
 だって、あなたはもう死んでいますので。。。」

「えっ。。。僕は死んでいるのか?」

「はい。。。さっき病院で亡くなられました
 ご家族に見守られながら
 安らかな最期でしたよ。。。
 覚えてらっしゃいませんか?」

そう言われると
そんな記憶がある。。。
確かにさっき。。。
僕は死んだはずだ
 
「思い出して頂けましたか?
 それは、よかった。。。
 ではこれから、この虹を渡って
 あなたを天国へとご案内いたします」

「天国って。。。
 死神が道案内をしてくれるのか?
 てっきり、天使が迎えに来るんだとばかり思っていた」

なにか、おかしい。。。
僕の中で。。。
不吉な想像が膨れ上がった
 
「わかったぞ。。。
 虹を渡るなんていう素敵な演出は
 実は、フェイクで。。。
 この虹の先には、地獄が待っているんだな
 そうだとしたら、僕は絶対行かないぞ」

地獄なんて行ってたまるか。。。
僕は断固、拒否する

「困りましたね。
 私は、確かに人間には死神と呼ばれていますが
 本当は、天使なのですよ
 まぁ。。。ちょっと訳があって
 鎌が必要なのでこんな格好をしてますけど
 それに。。。
 死んでいるのにこちらの世界に長くいると
 そのうち、消滅しちゃいますよ
 悪いことは言いません
 この先に地獄などありませんから
 私と一緒にいらっしゃい」

「君が天使だって?」

僕は少し、考えた
小さい頃、かあちゃんによく言われたっけ

「人は見かけで判断してはいけない」って。。。

死神に見える天使がいないと
僕にも断言はできない

もし、この自称。。。天使?の言ってることが
本当だとしたら。。。
ここに残れば、僕は消滅ってことに。。。

う~ん。。。
ここはひとつ。。。信じてみるか
 
「君がそうまで言うなら。。。
 信じることにするよ。
 消滅するのは
 僕だって、気が進まない。。。
 でも、嘘だったら許さないからな」

僕は、この死神に見える自称天使と
虹を渡ることにした

いざ。。。
虹の向こうへ!!!

MB900335176.JPG

虹の渡り心地は最高だった
ふわふわと。。。宙に浮かんでいる気分

「なぁ。。。天国ってどんなとこ?
 やっぱりお花畑とかあるのか?」

僕が聞くと自称天使はクスリと笑った

「お花畑はありません」

「じゃあ、一体何があるんだ?」

「天国では。。。
 その人が過ごした人生の中で
 一番幸せな時間が再現されているんです」

「一番幸せな時間?
 あぁ。。じゃあ僕はたぶん。。。結婚式の日。。。
 それとも。。。娘が生まれた日かな。。。
 いいや。。。ファーストキスの瞬間かも。。。」

いろいろ思い出していたら
口元が緩んでくる
いつのまにか僕は
情けないニヤけた顔で
虹の橋を進んでいた

しばらく歩くと
虹の端っこが見えてくる
あの先に天国がある。。。はずだ

僕は自然と小走りになっていった
一刻も早く、この目で天国を見てみたい

一体どんな夢のような世界が
待っているんだろう。。。
期待に胸がはちきれそうだ

そして。。。ついに
虹の端っこにたどりついた

「なんなんだ?これは。。。」

目の前に広がる光景に
僕は唖然としてしまった

そこには、無数の。。。
赤ん坊が浮いている
赤ん坊はそれぞれに
紐で繋がれて動けないようになっている

どこまでも。。。どこまでも。。。
視界を埋めるのは赤ん坊ばかり
一体どれだけの数がいるんだろう

「これじゃまるで。。。
 赤ん坊畑じゃないか
 何が、天国だ。。。
 何が、一番幸せな時間の再現だ
 死神。。。
 お前はやっぱり嘘つきな死神なんだな
 本当は、ここは。。。地獄なんじゃないのか?
 そっか。。。罪を犯した人間を
 扱いやすい赤ん坊にして紐でつないで
 ここに閉じ込めて自由を奪っているんだろ」

「違いますよ。。。
 あなたって人は。。。
 想像力が豊かすぎます
 よく見てくだ。。。
 あっ。。。ちょっと待ってくださいね
 一つ、仕事を済ませてきます」

自称天使はそう言うと。。。
ひとりの赤ん坊のそばに駆け寄り
手にもった大きな鎌を振り上げた

僕は思わず叫んだ

「やめろ。。。殺すな」

誰だって、目の前で赤ん坊が殺されるのを
黙ってみていられるはずがない

「殺す???
 滅相もない
 だって、ここの人たちは
 もう死んでいるんですよ
 死んだ人間をどうやったら殺せるんですか

 それに、こうすることは
 この人が望んでいることなんです」

自称天使は、その鎌を
ためらいもせずに勢い良く降り下ろした

鎌は、赤ん坊を繋いである紐を
バッサリと断ち切る

すると。。。赤ん坊は
大きな声で泣き始め
やがて。。。ふっと消えてしまった

「いったい何が。。。おこったんだ?」

自称天使は。。。僕の隣に戻って
こう言った。。。

「ここは、紛れも無く天国ですよ
 そして、これが。。。
 人生の中で一番幸せだった時間の再現
 よく見てください。。。
 彼らはみんな。。。胎児です。。。
 お母さんのお腹の中にいるときが
 一番安心で。。。幸せだったということなのでしょう
 言っておきますが、この状態は
 この方たち本人の選択
 潜在意識の中で、最も幸せだと感じている記憶が
 この姿の時なのです
 もう、どれだけの方をここへお連れしたかわかりませんが
 みなさん。。。このお姿になられます」

胎児。。。
そうか。。。そうなのかもしれない
母親のお腹の中で
なんの心配も無く
ただ、育つことだけに懸命になれる時間


それは確かに。。。
至福の時なのかもしれない

だから、みんなここでこうして。。。
赤ん坊になっているのか

「人生には楽しいこともあるが
 辛いことや悲しいこともたくさんある
 僕もいつも。。。
 不安と闘いながら生きてきた気がする
 手放しの幸せ
 母に守られている
 胎児の頃の記憶こそ
 人生最高の幸せの記憶だというのも
 なんだか、頷ける気がする
 
 その幸せが永遠に続く。。。
 それが、天国の正体なら
 まぁ、それもまた
 悪くないか。。。」

僕は。。。
この赤ん坊畑の一員になることを
いつしか、受け入れ始めていた

すると。。。自称天使が
笑いながら、こんなことを言う

「永遠?
 とんでもありません。
 人間というのは飽きっぽい生き物で
 もちろん、死んでからも飽きっぽくて
 そうですね。。。
 みなさん。。。
 一年もしないうちにここを出ていきますよ
 幸せとは、退屈なものなのでしょうね。。。」

「出ていくってどういうことだ?」

「あぁ。。。
 ご説明がまだでしたね
 ここを出たくなったら
 私に出たいと知らせてください。
 心の中で念じるだけで大丈夫です
 これでも、私。。。天使ですから
 それくらいはわかります
 ご希望された方には
 ほら、さっき見てたでしょ
 この鎌で。。。
 繋がりの紐を断ち切って差し上げます」

「紐が切れるとどうなるんだ?」

「私がこの鎌で紐を断ち切ると
 この赤ん坊は、現世に移動
 新しい命として生まれ変わることになります」

僕には、まだ。。。自称天使の言っていることが
よく理解できなかった
不可解な顔をして黙っていると
天使は遥か下の方を指さしこう言った

「ほら。。。あそこをごらんなさい」

見ると。。。そこは、病院
どうやら、産院らしい。。。

幸せそうな。。。母親
父親の目には
感動の涙が光っていた

二人の視線の先には
生まれたての赤ん坊

MB900416076.JPG

あっ。。。あれは。。。

さっき、ここから消えていった赤ん坊。。。

「人間は。。。
 長い人生を終えてここへやってきて
 至福の時間を手に入れます
 でも、なぜか。。。
 十ヵ月もすると、幸せに飽きて
 生まれ変わりたいと願うんです
 あまりに飽きっぽいので
 着替えが間に合わず
 いつも、この姿。。。
 おかげで、天使なのに死神呼ばわり。。。

 まっ。。。それはいいんですけど
 私は、素敵な仕事だと思っているですよ。
 この鎌は、魂の尾を切るためにあると思われてますが
 実は。。。命を産み出すためのものだった。。。
 なぁんて、ちょっとカッコいいでしょ。」

「そうか。。。
 そうやって、命はめぐってゆくんだね
 天国でしばらく休息して
 また、生まれ変わる
 うん。。。悪くないな
 悪くないよ。。。
 確かにここは、天国らしいね

 それじゃ。。。僕も
 人生の至福の時間の再現を
 しばらく楽しむことにするよ
 思えば今日まで、楽しい人生ではあったけれど
 ずっと走り続けてきて
 生きることに少々疲れたのも事実だ
 道案内。。。ありがとう」

さあ、天国への記念すべき第一歩だ。。。

僕が足を踏み出そうとしたその時
自称天使がこう言った


「あの。。。
 最後に一つ、聞かせてください。。。
 どうでしょう
 私、天使に見えてきましたか???」

僕は、自称天使をまじまじと見つめる

MB900250595.JPG


黒いマントと手には鎌
そこにたとえどんな真実があったとしても。。。

「いや。。。
 君はどこからどう見ても
 やっぱり死神だよ。。。」

「そっそうですか。。。
 いいんです、いいんです。。。
 気にしないでくださいね。」

そう言いながら。。。
自称天使は
とても残念そうに笑っていた

  おしまい

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