風見鶏 [小さなお話]

ニワトリさんの風見鶏
くるくるくるっと流されて
風の向くまま右左
調子がいいよね
風見鶏


ニワトリさんの風見鶏
それはちがうよ ほんとはね
風の力を借りながら
探しているのよ
ひよこたち

ニワトリさんの風見鶏
あちらこちらを見渡して
今日もはぐれたひよこたち
探し続ける
おかあさん

朝でも昼でも夜中でも
休むことなく探してる
愛しい我が子にもう一度
いつか出会える
その日まで



hana02.gif


町全体が見下ろせる
少し小高い丘。。。
ふぅちゃんは、この場所が大好きでした
だって。。。
ふぅちゃんのおうちも
公園も学校も
ケイちゃんのおうちだって
全部、見渡せちゃうのですから

その丘には
古ぼけた風見鶏がありました


いつも風に流されて
くるくるくると回ります

風が変わるたび
あっちを向いたり
こっちを見たり

ふぅちゃんは
このニワトリは。。。
調子がいい奴だと思っていました

だって、いつもふぅちゃんのお父さんが言っているんです

正しいと思ったら
他の誰がなんて言おうと
正しいほうを向いて歩いていきなさい
ふぅちゃんは、お父さんの言うことは
大抵、正しいって思っていました

だから、ふぅちゃんには
こんなふうにあちこち向きを変えるこの風見鶏が
なんとなく好きにはなれませんでした

ある日、ふぅちゃんがお父さんとその丘へ
遊びに行った時のこと

「お父さん、私ね。。。
 ここからの眺めが大好きなの
 でも、この風見鶏は嫌い。。。
 だって、このニワトリ。。。調子がいいよね。」

お父さんはなぜか、少し悲しそうな表情になりました

「ふぅ。。。
 それは違うよ。」

「えっ、何が違うの???」

お父さんは。。。しばらく風見鶏を見つめた後
ふぅちゃんにこんなことを言いました

 「この風見鶏のお話。。。
  聞くかい?」

「うん、教えて!!!」

ふぅちゃんがそう言うと
お父さんは静かに話し始めました


それは、お父さんがまだ小さい頃のお話でした


そのころ、おじぃちゃんは
ニワトリを飼っていたそうです


ニワトリは卵を産みました
大切に大切に温めて
やがて、卵は孵り
そのニワトリは、三羽のひよこのおかあさんになりました
ひよこ.jpg
毎日、それは楽しそうに
庭中を連れ立って歩きまわっていました

でも、ある日。。。

何匹かの野良猫が、ひよこたちを襲いました
あっという間の出来事です

そのままひよこたちは
野良猫につれさられ。。。

それから、おかあさんニワトリは
ずっと、ひよこを探しまわっていたそうです

ニワトリは、空が飛べません

少しでも見晴らしのいいこの丘に登って
あちらをさがし
こちらをさがし

餌も食べずに
眠りもせずに

そうしてやがて、弱っていって
とうとう、おかあさんニワトリは死んでしまいました

おじぃちゃんは。。。
おかあさんニワトリをたいそう可哀想に思って
この丘に風見の鶏を置いたそうです


風の力を借りながら
ずっとひよこたちを探していられるように


この風見鶏には
そんな意味があったんです。。。


お父さんのお話が終わった時
ふぅちゃんの目には涙が浮かんでいました

「おかあさんニワトリは今も
 ひよこたちにあえないままなの???」

そんなふぅちゃんの問いかけに
お父さんは、答えました

「大丈夫、きっともう見つけているさ。
 天国でずっと、親子仲良く
 連れ立って歩いてる。
 お父さんは、そう思っているよ。」

ふぅちゃんは、ほっとしました
だって、お父さんの言うことは
大抵、正しいと思っていましたから。。。

ふぅちゃんはもう一度
風見鶏をジッと見ました

風見の鶏は今日もまた
風の流れに身を任せ
くるくるくるっと回っていました。。。

            おしまい

にほんブログ村 小説ブログ 掌編小説へ
にほんブログ村

人気ブログランキングへ



nice!(1)  コメント(10)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 10

川越敏司

素敵なお話ですね。小さな子どもに聞かせたい童話です。前半の詩にメロディをつけて。

大好きです、こういうお話。

でも、りこさんのお話には、ほのぼのとしたお話の中にもどこか強い意志を感じます。メッセージ性というか。今回の作品は、それが絶妙のブレンドになっていると思います。

これは、JX童話賞などに出すべきでしたね。このまま埋もれてしまうにはもったいないお話です。来年ぜひチャレンジしてみてください。
by 川越敏司 (2011-08-22 08:23) 

haru

詩とお話の融合ですね。
詩にメロディーをつけると童謡になって、
お話に絵をつけると絵本になる。

ぜひ子ども達に聞かせてやりたいお話です。
あ、紙芝居にしてもいいですね。

りこさん、素晴らしいですね。
by haru (2011-08-22 08:44) 

リンさん

なんて可愛いお話でしょう。
りこさんの優しさが詰まっていますね。
そうか…風見鶏はヒヨコを探していたんですね。
風に乗って空を飛べるといいですね。
by リンさん (2011-08-22 19:03) 

春待ち りこ

>川越敏司さん
このお話、好きと言っていただけて嬉しいです。
童話賞は、今までたくさんチャレンジしていますが
層があつくて、まるで成果が出ません。
惨敗に次ぐ惨敗(笑)
童話独特の決まりごと。。。
これを意識しながら、推敲していくと
出来上がりの文章がぎくしゃくしてしまって。。。
なんとも、情けないお話です。
なので、ここしばらくは投稿していないのですが
たまには、出してみようかな。。。

まぁ、童話を書くのは好きなので
マイペースで頑張ってみます。
読んでくださって、ありがとっ♪
感謝です♪(^_^)v
by 春待ち りこ (2011-08-23 06:17) 

春待ち りこ

>haruさん
始めは、童謡詩を書こうと思って
まず。。。世界観を設定しました。

っで、出来上がった詩が上。。。
その時に設定した世界観を物語にしたのが。。。下

どちらも片方だけでは、
どこか物足りなかったので
いっそ、繋げてしまえ!!!と
こんな形になりました。(笑)

読んでいただけて嬉しいです。
いつも、ありがとうございます♪
by 春待ち りこ (2011-08-23 06:22) 

春待ち りこ

>リンさん
そうなんです。
実は、ひよこを探していたんです。クスクス(´艸`o)゚.+:
風見鶏。。。
なんで、鶏なんだろう。。。
そう思った時、妄想が始まりました。
っで。。。結果。。。こんな話に落ち着きました。(^_^)v

そうですね。。。ニワトリだけど飛んでいると思います。
風の力を借りて。。。
親の強い想いに、常識なんか通用しませんものね。タブン。。。
by 春待ち りこ (2011-08-23 06:26) 

かよ湖

素敵な童話ですね。
詩だけでも童話だけでも成立しそうですが、お話が終わったあとの「お父さんとの会話」も含めて、1+1+1=10くらいな出来の良さを感じます。
by かよ湖 (2011-08-23 14:13) 

春待ち りこ

>かよ湖さん
読んでくださって、ありがとうございます。
ほぼ、書き下ろしなので。。。
直し所満載なんですけど、ここの方々は優しいので
甘えております。(~_~;)
詩もお話も単独ではちょっと、押しが弱い気がしたので
並べちゃいました。

こういうお話を書くのは大好きです。
書いていて楽しいのが一番ですよね。(^w^)フフフッ

by 春待ち りこ (2011-08-23 21:58) 

ヴァッキーノ

矢菱さんのをharuさんが朗読してたのも
親子の会話でしたけど
こちらは、また違ったカタチでの親子の会話っすね。
父親の方が、母親よりも想像力があるってことなのかなあ。
それとも、子供に近いとか(笑)
いいお話ですね。
by ヴァッキーノ (2011-08-25 21:22) 

春待ち りこ

>ヴァッキーノさん
あのharuさんの朗読、よかったですね。
矢菱さんのお話もとっても面白いし。。。
飛行機が苦手なので。。。
あの息子の言うことにいちいち頷いてしまいました。(笑)

父親の存在感って
とっても大切だと思ってます。
子供にとって父親って。。。
一種のスーパーマンで正義の味方
ピンチの時には守ってくれて。。。あれ?幻想???
そういう特別な父親の言葉だから
信じられるっていうのもあるんじゃないかな。。。なんて思ってます。

読んでくださって、ありがとうございました。(^_^)v
by 春待ち りこ (2011-08-26 07:02) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

幸せの香り幼馴染の感想 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。