星のかけら [ちょっと長めの物語]

流れ星のきららは
地上へ向かい出発しました

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実は、昨日。。。
きららは天の川の大掃除をしている時
うっかり。。。赤、青、黄色の三つの星のかけらを
地上に落としてしまったのです

織姫様が言いました

「きらら。。。
 地上へ行って落とした星のかけらを
 全部集めてきてはくれないかしら。
 あの星のかけらは、年に一度
 七夕の夜にだけ天の川を渡る橋に変わる
 神様から頂いた大切なものなのです。
 あれがないと、来年の七夕は
 彦星様に会えなくなってしまうから。。。」

きららは、とても驚きました
だって。。。
それほど大切なものだったなんて
ぜんぜん知らなかったから。。。

「織姫様。。。
 僕は大変なことをしてしまったのですね。
 本当にごめんなさい。
 すぐ地上へ行って
 必ず三つの星のかけらを見つけて戻ってきます。」

「ありがとう、きらら。頼みますね。
 でも、危ないことをしてはだめですよ。
 それと、もうひとつ。。。
 私達、天の住人が
 地上にいられるのは三日間だけです。
 それを過ぎると、あなたは星のかけらになってしまいます。
 だから、たとえ全部見つからなくても
 必ず、三日のうちに戻ってきなさい。
 約束ですよ。。。」

織姫様はそう言いながら
きららの手をしっかり握りしめました

「わかりました。。。
 必ず星のかけらを見つけて
 三日のうちにここへ戻ってきます。」

きららは織姫様とそう約束をして
地上へ向かうことになったのです
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きららはまず、森に降りていきました
森の中を歩いていると
地面で何やら動いています
よく見ると。。。
そこにはひな鳥が一羽。。。
上を見つめて泣いていました

「おーい、おーい、
 僕はここだよ!!!」

木の上のはるか高いところにある巣に向かって
ひな鳥が叫んでいます
けれど、その木は高すぎて
ひな鳥の声は届きません

あぁ。。。
きっと巣から落ちちゃったんだな

可哀想に思ったきららは
ひな鳥に話しかけました

「巣から落ちてしまったのかい?
 可哀想に。。。
 僕は流れ星のきらら。
 僕が君を巣まで連れて行ってあげるよ。」

「ほんとに???
 ありがとう。。。
 やった、これでお家に帰れるんだね。
 よかったぁ~。
 それにしてもひどい目にあったよ。
 昨日、空から真っ赤な何かが落ちてきて
 僕は巣から弾き飛ばされちゃったんだ。
 あれ、なんだったんだろう。。。」

「えっ?昨日???
 それってもしかしたら
 僕の落とした星のかけらかもしれない。
 とにかく確かめてみよう。
 さぁ、ひな鳥くん
 僕の背中につかまって!!!」

ひな鳥を背中に乗せたきららは
ピューッと空へ舞い上がりました
そして、木の上の巣までひとっ跳び。。。
その巣の中をそっと覗くと
ひな鳥のほかの兄弟たちの
大きく開けたお口にまぎれて
真っ赤な星のかけらが
きらりきらきらと光っていました

「あった、あった!!!
 まちがいなく僕の落とした星のかけらだ。
 まずは一つ目を見つけたぞ。
 これで残りはあと二つ。。。
 ひな鳥くん、僕がかけらを落としたせいで
 巣から落ちちゃったんだね。。。
 本当にごめんね。」

きららが深く頭を下げると
ひな鳥が言いました

「頭なんか下げないでよ。。。
 だってきららくんは僕を助けてくれたじゃない。
 君が来なければ僕はまだ
 地面の上で寂しいまんまで泣いていたもの。
 助けてくれて、ありがとう。
 早く残りのかけらも見つかるといいね。」

「ありがとう、ひな鳥くん。
 じゃあ急ぐから、僕はもう行くね。
 織姫様が待っているんだ。
 さようなら。元気でね。」

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きららは、残りの星のかけらを探すため
また、飛び立ちました

風に乗って飛んでるうちに
一日目の夜が過ぎていきました

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二日目の朝。。。
ザッブーンという海の音を聴きながら

この海のどこかに
星のかけらがあるかもしれない。。。
だって、こんなに広いんだもの

ときららは思っていました

海で最初に出会ったのは
くるくると可愛い目をしたイルカでした
まずはイルカに聞いてみます

「イルカくん。。。
 僕は流れ星のきらら。
 探し物をしているんだ。
 この辺に、空から何かが落ちてこなかったかなぁ。」

すると、イルカはくるくるした目を
もっとくるくるさせてこう答えました

「そう言えば。。。おととい
 ラッコくんがスゴイモノを拾ったって
 自慢していたよ。
 青くてきれいな石だった。
 僕も見せてもらったよ。」

「きっとそれは、
 僕が落した星のかけらに違いない。
 イルカくん、いろいろ教えてくれてありがとう。」

きららは、イルカとわかれて
今度はラッコを探し始めました

けれど、探しても探しても
ラッコはなかなか見つかりません

それもそのはず。。。
だって、海は
とってもとってもとぉっても広かったのです

夕暮れ近くになって
きららは、ようやくラッコを見つけだすことができました

コンコン コンコココン

ラッコがお腹の上にのせた貝を
石で割って食べていました
その石は、ラッコの手の中で
時々青くきらりきらきらと輝きます

そうです
その石こそが、きららの落とした青い星のかけらでした

「ラッコくん、はじめまして。
 僕は流れ星のきらら。
 実は、君がおととい見つけたその石のことなんだけど
 それは天の川の星のかけらでね。
 掃除をしている時、僕がうっかり
 地上に落としてしまったものなんだ。
 それがないと織姫様は彦星様に
 会えなくなってしまう。
 出来れば返してもらえると嬉しいんだけど。」

きららがそう頼んでみると
ラッコが言いました

「これは僕の宝物さ。
 この石は貝を割るのにちょうどいいんだ。
 でも、君も困ってるみたいだし。。。
 そうだ、この石の代わりを探してきてくれたら
 返してあげてもいいよ。」

「わかった。
 僕、代わりの石を探してくるから
 待っててね。」

きららは、代わりの石を探しに出かけました

山の石は。。。
重すぎてだめでした
海の近くは。。。
砂ばかりでした
川のまわりで。。。
よくやく叩きやすそうな形の石を見つけて
さっそくラッコの所へ持っていきました

「わぁー。
 これは使いやすそうだ。
 ありがとう。
 はい、君の石を返すよ。」

ラッコは快く星のかけらを返してくれました
これで残りのかけらはあと一つ

でも、代わりの石を探すのにずいぶん時間がかかってしまって
今日はもう。。。三日目
天へ帰らなくてはいけない約束の日になっていました

「よし。。。
 今日中に絶対探してみせるぞ。」

きららは呟きました


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流れ星のきららは、風に乗り
空から三つ目の黄色い星のかけらを探していました
ずいぶん飛び続けているので
だんだん身体のあちらこちらが痛くなっています

「もう、無理かもしれない。」

日も暮れてきて、きららは半分あきらめ顔
泣き出しそうになったその時。。。

ピカッ!!!

もう暗くなりかかっているきららの周りが
一瞬、明るくなったのです

なんだろう。。。

明かりがやってきた方角に目をやると
なんと大きな光がゆっくりと回っていました

その光は。。。真っ暗な海を黄色く明るい光で
きらりきらきらと
まるでお日さまのように照らして出していました

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「そっか。。。灯台の光なんだ。
 それにしても、なんて明るい光なのだろう。。。
 あれはもしかしたら、星のかけらかもしれない。」

そう思って、きららは灯台に向かいました
灯台の中には。。。
おじいさんが一人
窓から海を見つめて座っています

「こんばんは、おじいさん。
 僕は流れ星のきららと言います。
 この灯台の光がとても明るいので
 もしかしたら、僕の落としてしまった
 天の川の星のかけらじゃないかと思って
 探しにきました。」

そしてきららは
今まであったことをそのおじいさんに
全部話しました

おじいさんはうんうんと頷きながら
きららの話を最後まで聞いたあと
こんなことを言いました

「それは大変じゃったな。。。
 確かにこの灯台の光は、三日前に
 空から降ってきた石を使っておる。
 おまえさんは、それを探しに
 わざわざ天から来られたんじゃね。
 すぐに返してあげたいが
 困ったな。。。
 この石を持って行かれてしまうと
 たくさんの船が夜の暗闇に飲み込まれて
 迷子になってしまうんじゃ。
 前にあった明かりは小さすぎて
 何隻もの船が海の暗闇に飲まれて戻ることはなかった
 だから、この石が降ってきた時は
 神様からのプレゼントだと思ってな。
 これで安心して船を見送ることが出来ると
 喜んでいたんじゃが。。。
 しかたあるまい。この石はおまえさんのものじゃし
 おまえさんもこの石がないと困るのじゃろう。
 持ってお行き。。。
 さっ、早くしないと三日目が終わってしまう。」

おじいさんは笑っていましたが
その目はとても悲しそうに見えます

きららは迷ってしまいました
この星のかけらを持って帰らなければ
織姫様はとても悲しむに違いない
けれど。。。
この光を今なくしたら
また、沢山の船が
海の暗闇に飲みこまれてしまう

どうしよう。。。

きららが困っていると
おじいさんがこう言います

「いいんじゃよ。
 おまえさんは、優しい子じゃね。
 もともとこの石は、天のもの。
 織姫様のためにも早くこれを持っておかえり。」

そのおじいさんの優しい言葉で
きららは決心しました

「おじいさん、この星のかけらは
 この灯台に置いていきます。
 大丈夫、僕にはいい考えがありますから。」

おじいさんの目が
パッと嬉しそうに輝きました

「本当にいいのかい?
 それで、おまえさんは困らないのかい?
 あぁ。。。ありがとう。。。
 本当にありがとう。」

おじいさんはぽろぽろ涙をこぼしながら
何度もありがとうを繰り返しました


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灯台を出て
きららは二つの星のかけらを握りしめながら
小さな丘の上に行きました

もうすぐ、地上に来て三日間が終わります

きららは、地上で出会った
ひな鳥やラッコやおじいさんのことを
思い出していました

「みんな、優しかったなぁ。
 地上は素晴らしいところだ。
 天の上ももちろん素敵なところだけど。。。」

すると、天から織姫様の声がしました

「きらら、早く戻ってきなさい。
 もうすぐ、三日目が終わりますよ。
 星のかけらはもういらないから
 今すぐ戻りなさい。」

きららはそれでも
天に帰ろうとはしませんでした

「ごめんなさい。。。織姫様。」

そう呟いた時、三日目が終わりました

その瞬間、きららの身体は輝き始めました
その光は、あっという間にきららを包み込み。。。

きららは、光になりました

赤い星のかけら。。。青い星のかけら。。。
そして。。。きららが黄色い星のかけらとなって
三色の眩しい光が辺りを照らしました

自分が黄色い星のかけらの代わりになること

それがきららの決めたことでした
きららには、選べなかったのです

おじいさんの涙も
織姫様の涙も
絶対見たくはなかったから。。。

それに
きららは案外幸せでした
だってきららは流れ星
だれかの願いを叶えるために
この世に生まれてきたのですから

三つそろった星のかけらは
まばゆい光を放ちながら
天の川に向かって
ゆっくりと飛び立っていきました。。。

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織姫様は、きららが星のかけらになってしまったことを
たいそう悲しみました
そして、彦星様にお願いをして
次の年から星のかけらの橋は使わず
船で天の川を渡ることに決めました
もう同じことが決して起こらない様に。。。
二度と誰も星のかけらを探しに
地上になど行かなくて済むように。。。

そして。。。
きららのような流れ星の生き方に
心を動かされた織姫様は
人の願いを叶えたあと
星のかけらに姿を変えて
地上に落ちた流れ星たちを
ひとつひとつ拾い集めては
天の川へ連れて帰るようになったのです
いつのまにか、天の川は天界でいちばん
輝く川となりました

天の川はそんな優しい流れ星たちの
想いをのせて今日も流れているのです

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たとえば。。。
あなたが七夕の夜に
ふと、空を見上げたとき
きらりきらきらと輝く天の川と
運がよければ
彦星様の船を見ることが出来るかもしれません

その時に
もしよかったら思い出してあげてください
だってもうあなたは知っているはずです
彦星様が橋を使わずに
船を漕いでいるその理由。。。

そして、探してみてはいかがでしょうか
そう。。。あの。。。きららの姿を

だって。。。
天の川に輝く星のかけらたちの
あの美しい輝きの中に
きららの優しい黄色い光も
きらりきらきらと
きっと輝いているはずですから。。。
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    おしまい

ちょっと季節外れの物語かな
リハビリ用に書いてみました。。。
今年初めてのお話も
長くなりました。。。
ボチボチ行きます。(笑)

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コメント 8

haru

パチパチパチ!(拍手)
やっぱりりこさんの中には、お話が沢山つまっていたのですね。
新年にふさわしいステキなお話でした。

札幌は凄く寒いけど、とってもあったかな気持ちになりましたよ。
太陽の光を反射して雪がキラキラ光っています。
by haru (2013-01-05 10:03) 

海野久実

素敵なお話が、我慢できずにどっとあふれたと言う感じですね。

これって三つの星のかけらがそれぞれ地上に落ちた先で、誰かの大事なものになっていると言うパターンでそれぞれの星の回収のエピソードを同じぐらいの分量で、章わけして書くと長編にでもできそうなアイデアですよね。

読む前にスクロールすると、どれだけ長いんじゃー(笑)と言う感じだったので、ためしにワードにコピベして改行を適当に削除して、普通の小説っぽくすると原稿用紙にして、15枚ほどでしたね。
決して長くはない。
携帯で読みやすくするために改行を多くすると言うのは解りますが、長めのお話は、読む前に身構えてしまうかもしれませんね。
うーん、今度にしようとか(笑)
by 海野久実 (2013-01-05 22:06) 

もぐら

お帰りなさい。
待ってましたよ。(*^^*)

ずっと言葉探しをしていらしたんですね。
優しいお話です。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。
by もぐら (2013-01-06 12:50) 

春待ち りこ

>haruさん
ふふっ。。。
年の初めなのでちょっと童話テイストのものを書いてみました。
まだまだリハビリ中なので、長い目で見てやってください。
今年は、いろんなジャンルに挑戦してみたいな。
優しいものもブラックなものも(笑)
そしていつものごとく。。。とっちらかったブログになっていくんでしょうね。

みなさんがここにいてくれるから
それがわかっているから
私は安心して?迷子になれるのかもしれません。
やっと、迷子センターから戻りました。
今年もよろしくお願いします。(。v_v。)ペコ

寒いですね。。。
くれぐれもご自愛くださいね。
by 春待ち りこ (2013-01-07 10:05) 

春待ち りこ

>海野久実さん
あら。。。どうしてわかっちゃうんでしょ。
このお話。。。プロットの時は7つの星のかけらだったんですけど
あまりに長くなっちゃうので
5つ省きました。(笑)
重めの内容のものを省いて。。。
最後だけズッシリ来るような構成にしたんですけど
着地点がどうもスッキリしませんでした。
まだまだ勉強不足です。頑張ります。
15枚。。。この辺りが一番書きやすくて
つい、このくらいの長さになっちゃいます。

でも、この長さって中途半端。。。ですね。これも今年の課題かなぁ。。。
ァハハ・・(´▽`)oO(ワラットクカ)
by 春待ち りこ (2013-01-07 10:12) 

春待ち りこ

>もぐらさん
ただいまです!!!
みなさんの「待っています」の言葉に
どれほど助けられたことか。。。

ようやく、戻りました。
まずは最初のお話を。。。
今年はいくつ書けるかなぁ~
楽しみでもあり。。。不安でもあり。。。

ゆっくり頑張ります。
ことしもどうぞ、よろしくお願いいたします。m(__)m
by 春待ち りこ (2013-01-07 10:19) 

かよ湖

あけましておめでとうございます。
とても素敵なお話ですね。
自分を犠牲にして星のかけらになることを選んだシーンにウルっときました。
だから、天の川は美しいんですね。また1つ空を見るのが楽しくなりました。
ありがとうございます。
by かよ湖 (2013-01-08 01:37) 

春待ち りこ

>かよ湖さん
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

読んでくださって、ありがとうございます。
気に入ってくださったのなら、幸いです。
星を眺めるのが好きなので
星の話を作るのが好きです。
この話は、結末がちょっとスッキリしないので
投稿しなかったんですけど
いつか、もっと素敵な話が書けるといいなぁ。。。
頑張ります!!!
by 春待ち りこ (2013-01-11 23:37) 

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