奴ら [小さなお話]

とある星のとある国
この国の奴らは
乱暴で誰の言葉にも耳を貸そうとしない
自分たちのためだけに作り上げた
利己的な正義をふりかざし
それに従わない国には
直ちに宣戦布告

奴らは、強かった
どの国も敵わぬほどに。。。

この星で、奴らがのさばり始めてから
この星は。。。
ひどく住みにくいところになっていった

奴らに対する対応は
国によってさまざまで
ある国は
仕方がなく奴らに従う道を選び
また、ある国は
奴らの目の届かない
辺境で不便な土地に移り住んだ

奴らは気まぐれで
したたかで
しかも、破滅的

その思考回路はとても理解し難く
常に周りの国を驚かせ続けた

従順な者に優しくしているかと思えば
突然、裏切り
時には。。。
命をも奪い、その肉を食らう

奴らの残虐な行動は
日々、エスカレートしているように思えた

ついに、耐えきれなくなった
国々の代表が集まり
国際会議が開かれた

奴らへの対応策を打ち出すためだ

「もう、これ以上。。。
 我慢が出来ない。」

「あぁ、もちろんだ。
 でも、どうする?
 奴らは強い。
 俺たちが束になってかかっても
 とても歯が立ちそうもない。」

「じゃあ。。。
 神様に頼むというのはどうだろう。
 奴らに勝てる者は
 もはや、神様以外には
 いないような気がする。」

「あの、実は。。。」

小さな国の代表が
おずおずと手をあげて話し始める

「私たちの国では
 それをもう試してみたのです。
 奴らを退治してほしいと
 私たちの信じる神様に
 お願いしました。
 結局。。。
 無駄に終わってしまった。
 奴らには奴らの神様が
 背後にちゃんといるのです。
 確かに私たちにとっては
 悪魔のような奴らですが
 奴らにとって闘うことは正義を守ること
 その正義がどんなに歪であろうと
 彼らにとっては、その歪みこそが
 正義なのです。。。
 そして、正しいことをしている者を
 守ることが神様の役目。
 奴らの神様は。。。まさしく
 戦争の神様でした。。。

 残念ながら、私たちの神様は
 負けたのです。」

「奴らは。。。
 神様よりも強いのか。。。」

どの国の代表の顔にも
絶望の色が浮かんだ

その時。。。

「いや。。。
 あきらめるのは、まだ早い。」

そう言い放った者がいた
それは。。。
国をあげて、長い間
奴らと闘い続けている勇敢な民族の長だった

「それぞれの国で違う神様に祈っていたんじゃ
 力も分散するさ。。。
 強い敵を倒すときは、大勢で協力しないとな。
 ここはどうだろう。。。
 この際、宗教の違いを乗り越えて
 ただ一人の神様に。。。
 みんなでお願いすることは出来ないだろうか。」

みんな、しんと静まり返った
さすがに、自分たちの信じる神様以外に
祈りをささげるのには、抵抗があったのだ

けれど。。。

このままでは
世界が終わってしまうかもしれない

事態はもう。。。
そんなところまで来てしまっていた

「よし。。。祈ろう。
 もう、迷っている場合ではない。
 みんなで力を合わせるんだ。」

奴らに沢山の同胞を殺された国の
国王が叫んだ

すると。。。
他の国々も次々と声をあげる

「そうだ、そうしよう。」

「もう、それしかあるまい。」

「だけど、どこの神様に祈るんだ?」

「それは、もう決まっているさ。」

「えっ?」

「我々の中で唯一
 奴らと勇敢に戦い続けている
 君たち民族の神様なら
 きっと、奴らを倒すことが出来る。」

「そうか。。。そうだな。
 長い間、奴らと闘い続けているもんな。
 君たちのことは
 奴らのほうも恐れていると聞いている。
 時には、その姿を見ただけで
 恐れおののいて逃げ出すものまでいるとか。
 君たちの神様なら。。。もしかして。。。
 よし。。。
 君たちの国の神様に祈ろう。。。」

全員の意見は、一致した

翌日から
この星のあちらこちらで
一斉に祈りの声が聞こえ始めた

そしてその祈りは。。。
休むことなく聞こえ続けた


MB900355075.JPG

「しまった。。。
 寝坊だ、遅刻する。」

さとしは、ベッドから飛び起きた
昨夜の深酒が祟った。。。
お日さまはもう、かなり高いところにある

いったいどれくらい寝過ごしただろう

正確な時間を知るために
とりあえず、テレビをつけた
MB900233772.JPG
すると。。。

真っ蒼な顔をしたキャスターが
慌てた様子で何かを喋っている

「今朝。。。
 突如あらわれた
 巨大なゴキブリは
 人間を次々襲い続けています。
 ミサイルも殺虫剤も効きません。
 もはや、人間になす術は。。。
 ぎゃあー!!!」

キャスターの叫び声とともに
テレビは砂の嵐を映し出す

いったい何が起こったんだ?

さとしには、まだ
訳が分からなかった

その時。。。
ふと。。。窓の外に気配を感じる

さとしは窓の外に目を向けた

「わぁあー!!!」

さとしが人生で最期に見たものは
巨大なゴキブリが
さとしに向かい
でかい口を開けている姿だった。。。


MB900355075.JPG
           

ゴキブリの国の神様が
人間の国を。。。滅ぼしてくれた

MB900053173.JPG

この星の。。。
ありとあらゆる生き物が

この神様に感謝をしていた。。。

            おしまい

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コメント 6

haru

いやぁ~最後のオチにはビックリしました。(@_@;)

深いお話ですね。
地球という星で、一番恐ろしい生物はやはり人間。
でも、まさかの展開に唖然とするばかり。(笑)
凄く面白かったです。
by haru (2013-01-07 12:41) 

リンさん

りこさん、お帰りなさい。
これからもヨロシクお願いします。

そうか…。そういうオチでしたか。
何かあるな、正体は何だ?と思いながら読んでいましたが、これは思いつきませんでした。ビックリです。
正体がわかってから読み直すと、なるほど…ですね^^
ちょっとこわ~い。
奴らにも神様いるのかな~^^

楽しみました!!
by リンさん (2013-01-07 15:53) 

もぐら

うわー 絶対私が一番先に喰われるな・・・。
なんせ新聞紙丸めてバシッ!ですもん。
あらら~。
ごめんね~。Gちゃん。(反省の色ナシ!)

書き込めるかなぁ・・・。
by もぐら (2013-01-08 17:53) 

春待ち りこ

>haruさん
びっくりしていただけました?
楽しんでいただけたのなら、よかったです。

この星に害をなしているのは
紛れもなく。。。人間
たぶん、他の生物からしてみれば
そんなふうに感じるんだろうなぁ。。。なんて
あんまり嫌われないようにしないと
いつか。。。こんな報復があるかもしれません。(^^;;
by 春待ち りこ (2013-01-11 23:18) 

春待ち りこ

>リンさん
ただいまです!!!
楽しんでいただけたのなら、よかったです。

でも、復帰直後なのに。。。体調を崩してしまいました。
健康には気を付けないといけないですね。反省です。

ちょっと怖いでしょ。。。巨大化した奴らに襲われたら。。。
((((;゚Д゚))))ブルブル。。。です。

どうぞまたよろしくお願いいたします。
by 春待ち りこ (2013-01-11 23:22) 

春待ち りこ

>もぐらさん
えっ?新聞でいけますか???
ヽ〔゚Д゚〕丿スゴイ
私はどうも苦手で、出会いの度に逃げ惑います。。。
その逃げてる姿の方が恐ろしいと。。。家族には言われますが
怖いものは怖い!!!です。(>_<)
もぐらさん。。。尊敬です!!!


by 春待ち りこ (2013-01-11 23:26) 

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