白粥 [エッセイ]

はじめに。。。

これは、娘がまだ、
小学生の低学年だった頃に書いたのもので
今現在。。。私は元気です。
だからどうか。。。
優しいここのみなさま。
ご心配などされぬようお願いいたします。
もしよろしければ。。。
安心して読んでいってやってください。
どうぞ、お願いいたします。



「白粥」

高熱で、うつらうつらしている私に
娘が言う

「私の風邪、うつっちゃってごめんなさい。」

もう、これで何度目のごめんなさいだろう
娘は風邪が治ったばかり
ようやく元気になったと思ったら
今度は、私がダウンした

もっと、自分で気をつけていれば
娘の風邪がうつるなんてことは
避けられたはず

悪いのは娘ではない

それなのに
娘は必要以上に
私の心配をしてくれる

それはとても、ありがたい
確かにありがたいことだけれど

高熱にうなされている私としては風邪.jpg
つきっきりで謝られると。。。
本当は少し、辛い


「ママは大丈夫だから
少し向こうへ行っててね。」

ついに、娘を部屋から追い出し
私はゆっくり目を閉じる
嫌な寒気がする
もうすこし、熱が上がるらしい

そして、うつらうつら
意識が遠のく
やっと眠りにつける
そう思った時


「ママ!!!」

突然、部屋のドアが開いた

またか。。。お願い、もう少し眠らせて

「お粥作ったよ。食べてね。」

娘の意外な言葉に
そっと目を開けてみた

そこには、どれだけかき混ぜたのだろう。。。
お餅のように粘りのありそうな白粥

「これ、ママのために作ってくれたの?」

目頭が熱くなり
さっきまでの寒気が消えていく気がした

この白粥は
私にとって。。。
最高の風邪の特効薬みたいだよ

嬉しくて、溢れ出しそうになる涙を
グッとこらえながら

白粥を一口食べると。。。
娘が言う

「私の風邪、うつっちゃってごめんなさい。」


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スイカ [エッセイ]

夢を見た。
子供の頃の夢だ。
季節はずれの夢だったけど。。。

それは、夏の日の優しい記憶。。。


そこには、じぃちゃんがいた。
そして、ばぁちゃんもいた。

二人は並んで、笑っていた。


いとこたちと。。。影踏みをして遊ぶ。
のろまな私は、いとこたちに追いつけず。。。
ずっと、鬼のまま。。。

悔しくて泣きそうになっていると
家の中から。。。おばちゃんが。。。
スイカを持ってあらわれる。

「さぁ、スイカを切ったよ。。。みんな、お食べ!!!」


その声を合図に、影踏みは終わり
みんなスイカのもとへ集まってくる。


さっきまで、井戸水で冷やされていたスイカはスイカ 一切れ 大.png
遊び疲れた私たちの喉を潤す。


「誰が一番遠くまで、種を飛ばせるか競争しよう。。。」


いとこの一人が言いだす。


「いいよ、俺、負けないよ。」


そう言ったのは、べつのいとこ。。。
それからしばらく。。。スイカの種飛ばし大会が続いた。
のろまなうえに。。。とろい私は。。。もちろんビリ。

だけど、もう。。。悔しくはなかった。
だってスイカは美味しいし。。。みんな笑ってるし。。。


なんだかとっても。。。嬉しかった。


目が覚めた時、思った。


あの頃、私は幸せだった。
私は、子供で。。。
まわりの大人にも。。。
年上のいとこたちにも。。。
守られていた。


とろけだしそうな。。。
優しい眼を細めて。。。
じぃちゃんもばぁちゃんも。。。
私を見守り続けてくれていた。


父さんも母さんもまだ若くて。。。
どんな敵からだって、きっと私を守ってくれる。。。
そんな風に思えた。


生きると言うことに、何一つ不安などなかったあの頃。


今は、守られるほうから。。。
守る方へ。。。


私の立場は大きく変わった。

私が守られていたように
私も娘を守りたい。

心から、そう思う。。。


けれど、あの頃の夢なんか見ると。。。少しだけ
あの時代に帰りたいなと思ってしまう。


今の幸せとは違った形の幸せを
あの時の私は、確かに持っていたから。。。


あの日、薪を焚くかおりにつつまれて。。。
スイカをほおばっていた私。

今は、天国の住人になったじぃちゃんとばぁちゃんの
皺の刻まれた。。。笑顔。。。

もう帰らない至福の時。。。


ねぇ。。。


いつか歳をとって。。。
私もいとこたちも。。。寿命を迎えてさ
そろって。。。天国へ行った頃に。。。
また、みんなでスイカを食べようよ。


私は子供の姿に戻り。。。
今度こそ、スイカの種飛ばし。。。


一等賞になるからさ!!!


人生の果ての果てに
そんな夢を持っても。。。いいよね。



今はまだ、守らなきゃならないものがあるから。。。
もう少し、ここで頑張るつもりでいるけどさ。
でもいつか、この大役が終わったらさ。。。


約束だよ。。。


じぃちゃん。。。ばぁちゃん。。。スイカ 一個.png
スイカ冷やして。。。待っててね。。。


出来る事なら歳の順に
きっと、そっちも。。。にぎやかになるはずだから。。。

そしたらみんなで、スイカを食べよう。。。
いつかみんなで。。。

スイカを食べよう

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マッチ [エッセイ]

朝、仏壇にお線香をあげようとした時
ライターがつかなくなっている事に気がついた。

ライターを探し、タンスの引き出しの中をかき回す。
奥の方から、古いマッチが出てきた。

「これで、ロウソクに火をつけてくれる?」

娘に頼むと、意外な答えが返ってくる。

「マッチ、使った事が無いから出来ない。」

……えっ? 

あっ、そうか。
娘は、生まれた時からライターのある暮らし。
マッチなんか擦らないか……。
手元のマッチを改めて見つめた。
ふと、あの日の軽い火傷の痛みを思い出した。
 
あれは、小学六年生の時の事。
修学旅行用の新しい洋服を大好きなおじぃちゃんに買ってもらった。
嬉しくて、早速おじぃちゃんに手紙を書いた。

「おじぃちゃん、洋服を買ってくれてありがとう。」

その手紙を修学旅行のお土産と一緒に渡そう。
そんなふうに、あの時は思っていたんだ。         

でも、修学旅行の直前に、突然おじぃちゃんは亡くなってしまった。
初七日の法要と私の修学旅行の日が重なった。
両親も、おばぁちゃんも、

「修学旅行に行っておいで。」

と言ってくれた。
そのほうが、おじぃちゃんも喜ぶはずだと……。

小さい頃から、おじぃちゃん子だった。おじぃちゃん.jpg
せっかく、おじぃちゃんの買ってくれた洋服を
着なくてはいけないと思った。

私は、修学旅行へ行く事を決めた。

旅行から帰って、数日が過ぎた。
私の手元に、あの手紙だけが残った。
渡せなかった感謝の手紙。

捨てる気にもならず
どうしようか考えていると
ふと、以前テレビで見た「お焚き上げ」という行事を思い出した。

お坊さんがお経を唱えながら
いろんなものを燃やしていく。
そこからあがって行く煙は
天国まで届いているかもしれない。

だったら、この手紙もきっと届く!

そう思った。

私は、一人で「お焚き上げ」をすることにした。
ありがとうの手紙を天国まで届けるために……。

まずはお経を覚える所から始めた。
家には、般若心経の書かれた扇子があった。
その日から私は、般若心経を必死に覚えた。

一ヶ月ほど、時間がかかった。

それでもなんとか、般若心経を覚えきった。
私は、マッチと手紙を持って裏庭へ向う。

シュッと音をたてて、マッチに火がついた。

般若心経を唱えながら、手紙を燃やす。
あっというまに灰になる手紙。

……アチッ。

少し、手に火傷を負った。
でも、どうやら無事に、私の「お焚き上げ」は終わった。

ホッとしたら、火傷がヒリヒリした。
ちょっと、涙がこぼれた。

今から思えば、なんと幼い儀式だったのだろうと思う。
あんな事で、「お焚き上げ」など出来るはずが無い。
でも、あの頃の私にとっては、あれが精一杯の供養だったように思う。



シュッ

あの日と同じ音を立ててマッチが燃えた。

あの手紙は、おじぃちゃんに届いたかなぁ……。

仏壇のロウソクに火をつけながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。



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月の沙漠 [エッセイ]

私のピアノは、子供の頃に買ってもらった
古い古いピアノだ。。。

もういい加減、、、限界。。。

ペダルは変だし。。。

でも、このピアノには
私の思い出がいっぱいつまっている。

練習が嫌で。。。
泣きながら弾いていたこともあったよな。。。piano.gif

あれは、いつのころだったか。。。
もう。。。ずいぶん前のことだけど。。。

父が、私のピアノを弾いていたことがあった。


父がピアノを弾いてる姿を見たのは
後にも先にも。。。たぶん、あの時だけ。。。


曲は。。。たしか。。。

「月の沙漠」

右手の人差し指を一本だけ使って
主旋律

伴奏は。。。
左手の親指を一本だけ使って
ベース音のみ

父は、ピアノを習ったことなどないはずだけど。。。
まさか、あんな特技を持っていたなんて!!!

驚きだった。

おそらく、あの曲だけ。。。
誰かに教わったんだろうなぁ。


単純で。。。
だからこそ。。。

澄んだ響き。。。


父には、父の時間が流れている。
父にも、父の青春があった。

そんな時間の中で。。。
あの曲を弾いたのだろう。。。

当たり前のことなのに
あの時、父が見知らぬ人に見えて。。。
なんとなく不思議に思ったのを覚えている。

私が生まれてから。。。今日までの父を
私はよく知っている。

けれど。。。
それ以前の父のことを

。。。まるで知らない。


父は、あまり昔のことは話さないから。


あの「月の沙漠」は。。。
父にとっては、想い出の曲なのかもしれない。

見知らぬ父の奏でる


「月の沙漠」

きれいな音だった。


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運命のカップ ~2500円也~ [エッセイ]

ガチャン。。。

キッチンで、派手な音がした
のぞきに行ってみると
娘が立っていた

「コーヒーカップ、割っちゃった。。。」

見ると、娘のお気に入りのプーさんのコーヒーカップが
ものの見事に割れている

あらら。。。

「仕方がないよ。。。
 形あるものは、いつか壊れるもんなんだから。」

そう言って、割れたカップを片付ける

片付けながら。。。
私は、あの日の母の言葉を思い出していた


   ○ ○ ○
コーヒーカップ.gif

昔から、カップが好きだった
コーヒーカップやら
ティーカップやら
いろいろ集めては、楽しんでいた

とはいえ。。。

学生時代は、そんなに高いものは買えない

でも。。。
あのコーヒーカップをお店で見つけた時
私の心は、ビビッと震えたんだ。。。


これ。。。
このコーヒーカップ。。。欲しい!!!


それは、叫びに近い想いだった


何が何でも欲しい!!!

どんなに高くても欲しい!!!

絶対に連れて帰る!!!

このカップでコーヒーを飲むんだ!!!

私には、このカップが必要だ!!!

このカップはきっと。。。
私に使われるために作られたんだ!!!



妄想癖の激しい私は
思いこんだら止まらない


ただ、いくら思いこんだからと言って
お財布のお金が増えるわけもなく。。。
ちょっと不安げに。。。価格チェック。。。

2500円

。。。微妙な値段


何万円もするならば。。。
泣く泣く諦めたりするかもしれない。。。

でも。。。
2500円。。。


学生だった私にも、買って買えない金額ではなかった
……もちろん。。。

買った。。。


そのカップは、全体が青みがかっていた
カップの底は。。。
エメラルドグリーンの透明感のある色で
全体に。。。ムラがあり
そのムラが。。。なんとも言えない雰囲気をかもしだしている


完璧だ。。。完璧すぎる。。。


私は、一生このカップで、コーヒーを飲み続けるのだろうと思った
それほど、好きなカップだった。。。


ある雨の休日。。。

外へ出るのも、傘をさすのも面倒だった私は
家でコーヒーを飲みながら、本を読むことに決めた


例のコーヒーカップを食器棚からとりだす。。。
今日は、モカでいこうか。。。などと考えながら
その時。。。手が滑った

お気に入りのカップは、いともたやすく。。。3つになった

数は増えたけど。。。
壊れたカップでは、コーヒーは飲めない

悲しかった。。。


もう二度ともどらない。。。
あのコーヒーカップのある空間。。。


今から思えば、おおげさである
少し高かったとはいえ。。。

2500円。。。(^w^)ぷぷぷ・・・

でも、あの時は。。。本当に悲しかったんだ


落ち込んでいる私に気付いて
母は、こんなことを言った。。。。

「カップが割れちゃたのは残念だったけど
 これは、チャンスかもしれないよ
 次の運命のカップに出会うためのチャンス

 コーヒーカップが割れたのも
 次のチャンスを見逃さないようにっていう
 神様の。。。
 粋なはからいだったのかもしれないし。。。

 何事も、良い方に考えないとね。。。

 形あるものはいつか。。。
 壊れるもんなんだから。。。

 それとも、割れないように。。。大切にして
 使わずにしまっておけばよかった???
 使ってナンボ。。。でしょ。
 使えばいつかは、割れる
 そして、割れてはじめて。。。
 新しいお気に入りのカップに出会える

 そんなものじゃないのかな。。。

 たぶん。。。カップだけじゃない
 人生も同じ。。。」


母の言葉は、衝撃的だった
一生ものとして、大切に使い続ける
これは、確かに理想なのだけど
使っていれば。。。壊れることも、かけることもある

割れてしまったことを。。。悲しむか
それとも、次の運命のカップに出会うための
序章だと考えるか。。。

視点の問題である


たかが、カップ
されど、カップ


コーヒーカップで人生を語れる
そんな母にも、驚いたけど。。。(笑)


私は、カップが割れるのは
チャンスをもらったんだって考えることにした

それは、今でも。。。




   ○ ○ ○




あれから私は。。。
たくさんの運命のカップと出会い続けている
幸せなことである


ただひとつの難点は。。。
カップが割れる前に次のカップに出会ってしまうものだから

家中にカップがあふれていること。。。クスクス(´艸`o)゚.+:


だんな様からは。。。

「もう、割れないかぎり、コーヒーカップは買っちゃだめ。。。」

と言われている


運命のコーヒーカップなのに???

運命禁止令。。。発令 (T_T)

だけど。。。なぜか。。。こっそり。。。
静かに。。。また増える。。。内緒ね♪ 
コーヒーカップS.gif紅茶カップ.gifコーヒーカップ白.gif
クスクス(´艸`o)゚.+:


娘は、割れてしまったプーさんのカップのことはすぐに忘れて
食器棚を物色し始めた。。。
新しく自分専用のカップを選ぶために。。。

今度は。。。どのカップを自分のお気に入りのカップにするんだろう

どれでも、使ってくれていいよ……
だって、ウチの食器棚は
私の運命のカップがたくさんたくさん詰まっていて

選び放題。。。

「たくさん入れば、何でもいいや。」

などと言いながら
食器棚をかきまわす娘。。。


娘にはカップへの執着心はないみたい
母のしてくれたカップのお話は
どうやら。。。必要ないみたいだ

ちょっと、残念。。。


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蝉のお話 [エッセイ]

ちょっと、季節はずれではありますが
。。。夏のエッセイをひとつ。。。

お付き合いいただければ、嬉しいです。


                   りこ


    『蝉のお話』



夏の暑さに蝉が鳴く。
この蝉の声を聞いていると、
私はおじぃちゃんのことを思い出す。
これは、私の大切なおじぃちゃんの思い出。
 
蝉が成虫になってから、
たった一週間しか生きられないと知った時、
まだ小さかった私は、
大きなショックを受けてしまった。
 
「蝉がかわいそう。」
 
そう言いながら、泣き続けた。

あの時、おじぃちゃんはそっと教えてくれたんだ。
 
「蝉はな、
長い間土の中で、楽しく暮らしていたんだよ。
そして、天国へ行く時期がやってくると、
土の中からはい出してくる。
天国は、空の高い高い所にあるんだ。
ずっと土の中で暮らしていた蝉が行くのは、とても難しい。
だから神様が、特別に練習をする時間をプレゼントしてくれた。
一週間、地上に出て、空を飛ぶ練習をする。
そして、上手に飛べるようになってから、
天国へ旅立っていくんだよ。
ちっとも、かわいそうなことはないさ。
だって、これから天国に行って、
もっと楽しく暮らすんだからな。」
 
今ならわかる。

私を慰めるためのおじぃちゃんの作り話。
でもあの時、この話に私は救われた。
 
あの作り話は、おじぃちゃんが私のために
必死にひねり出してくれた知恵のお話。
思い出す度に、今はもう天国の住人になってしまった
おじぃちゃんのぬくもりがこの胸に蘇る。
 
もしも、娘が同じことを言ったら、
このお話をしてあげようとずっと思っていた。

でも娘は、「蝉がかわいそう。」とは言わない。
それどころか、「気持ちが悪い。」と言って、
蝉を触ることも出来ない。

ちょっと残念だ。
 
話してあげたかったなぁ。

蝉のお話。

そして、私の大好きだった優しいおじぃちゃんとの
大切な大切な思い出のお話。

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ピースケのお墓 [エッセイ]

電線に。。。小鳥が止まっていた。
なんだか、やけにきれいな色をしている。
よく見ると。。。セキセイインコだった。。。

どこかの家で飼われていたのが逃げてきたのかな。。。

ふと、娘が通っていた幼稚園で飼っていた
セキセイインコを思い出す。
子供たちはみんな。。。
あのセキセイインコが大好きだった。。。

大好きすぎて。。。

そうそう。。。こんなことがあったっけ。。。




「ピースケが、ちゃんと天国へ行けたかどうか
 確かめることになったの!!!」

娘がそう言った。

あの頃。。。
ピースケという。。。
なんとも古めかしい名前の小鳥を
幼稚園では飼っていた。

黄色いセキセイインコ。

その三日くらい前。。。
娘が泣きはらした目をして帰ってきた。
「どうしたの?」
と聞くと。。。
「ピースケが死んじゃったの。
 呼んでも触っても、動かないの。」
と言って、また泣いた。

まだ幼かった娘にとって
目の当たりにした
初めての死だったのかもしれない。

死というのは、娘にとって
呼んでも。。。
触っても。。。
動かなくなること。。。


死んだピースケを。。。
みんなで幼稚園の園庭の片隅に埋めて。。。
お墓を作ってあげたらしい。。。

そのお墓の前で、幼稚園の先生は。。。
「ピースケは、天国に行ったのよ。
 天国はいいところらしいから
 ピースケもきっと。。。楽しく暮らしていくと思うよ。」
と娘たちを慰めてくれた。。。


ところが。。。それが、裏目に出た。

純粋な幼稚園児たちは、
先生の言葉を丸ごと。。。
そのまま受け止めてしまった。

あの時の娘の話を総合して。。。
要約すると。。。
次のような話の流れで。。。
ピースケが天国へ行けたかどうかを
確かめることになってしまったらしい。。。

ピースケは。。。天国へ行った!!!
って先生は言った。。。

本当に天国に行けたのかなぁ。。。
もしも、行けてなかったら。。。
土の中で独りぼっちで可哀そうだ。

と園児の一人が言いだす。。。
そして。。。別の園児が提案をする。

天国に行けてるかどうか。。。
心配だから。。。確かめよう。。。
確かめるには。。。お墓を掘ってみよう。。。
天国に行ったのなら。。。土の中にピースケは。。。
もういないはずだから。。。

この提案に。。。全員が乗ってしまった。

それは、いい考えだ!!!

どの子もピースケのことが心配なので
完全に歯止めが効かなくなっている感じだった。

先生。。。困ってるだろうなぁ。。。

いったいどうするんだろう。。。


ピースケのお墓を掘り起こすなんてこと。。。
まさか、させないよね。。。


それから、1週間くらいたってから。。。
娘は、頬を真っ赤にして興奮しながら。。。
幼稚園から帰ってきた。

「ママ、ピースケが天国へいけたよ!!!」

私の顔をみるなり。。。
娘が叫んだ。

えっ。。。行けたって???
まさか、本当に。。。掘り返したの???

よく聞いてみると。。
ピースケのお墓を掘り返したのは本当らしい。
でも、そこにピースケはいなかったと言う。。。

「だからね。。。天国にいけたんだよね。」

無邪気に笑う娘。

???

先生。。。どんな手を使ったんだろう。。。
どうしても知りたくて、幼稚園に電話をかけてみた。

先生は。。。
ピースケの埋めてある場所に
目印として置いてあった石を
1週間かけて、動かしたらしい。。。

毎日毎日。。。子供に気付かれないように少しずつ。

先生も相当困ったらしい。

天国に行くのは。。。
魂だけなんだよ。。。

って言ってはみたが。。。
魂というのが幼い子供たちには理解されず。。。
納得をしない子供たちに。。。負けて
結局。。。。
お墓を掘りかえすなどと。。。
とんでもない行為に及んでしまったことを
謝罪されていた。

これから、少し時間をかけて
お墓というのは。。。手を合わせるもので
決して、むやみに掘り返したりしてはいけないと
教えるつもりだともおっしゃっていた。


幼稚園の先生も。。。大変だ。。。

でも、あの時の娘の嬉しそうな顔は
今も心に焼き付いている。。。

多少、強引な方法ではあったけれども
娘たちもピースケを思いやるばかりに
こんなことを考えついたんだ。

そして、子供たちを傷つけないように
精一杯努力していただいた先生に
今も感謝をしている。。。

神様もきっと。。。
許して下さると思う。。。

みんな、優しさからおこったこと。

何よりあの時の
とても幸せそうな娘の笑顔が
それを証明してくれていたような気がする。。。

きっと、ピースケも本当に。。。
天国に行けていたに違いない。

だって、子供たちにあんなに愛されながら
旅立っていったのだから。。。


そんなことを思い出しながら。。。
さっき、セキセイインコの止まっていた電線を
もう一度、見つめた。

セキセイインコはもう。。。そこにはいなくって
ただの電線が。。。
少しユラユラと揺れていただけだった。

あのセキセイインコもそんなふうに。。。
誰かに愛されていたのかもしれない。

だとしたら。。。
上手く家に帰れるといいんだけど。。。

もちろん、あのセキセイインコにとってそれが幸せかどうかは。。。
私には、わからないことだけど。。。


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ちーばぁちゃん [エッセイ]

ちーばぁちゃんは
大正生まれ

関東大震災を経験した世代
もちろん。。。あの戦争も。。。

今、私たちの生きる時代にも
この時代なりの闇がある

精神的な抑圧だったり
虚無感だったり
いろいろだ

不景気。。。

これだって。。。深刻な問題

人の辛さは。。。
比べることなんかできない

あの世代の人の苦しみに比べたら
今の時代の苦しみは、まだましだ。。。
なんてことも思えない

ただ。。。確かにひとつ、言えることは

ちーばぁちゃんの時代は
不幸が。。。
目に見える形で降り注ぐ時代だった

地面が割れるほどの
大きな地震を経験し

街並みが焼け野原に変わるほどの
空襲の中を逃げまどった

あの世代は。。。そういう世代だ

子供の頃、
ちーばぁちゃんに聞いたことがある

「関東大震災って怖かった?」

ちーばぁちゃんは。。。こう答えた

「怖かったよ。。。
 ものすごく揺れたからね
 友達が何人も死んだ
 大黒柱は太くて丈夫だから
 地震の時は大黒柱につかまれって
 昔はよく言ったもんだけど
 あの時、大黒柱にしがみついた者が
 みんな死んじゃった家もあった
 大黒柱は確かに折れはしなかったけど
 家自体が崩れてな
 大黒柱も倒れてさ。。。
 家族全員、下敷きになって死んじゃったよ
 大黒柱は太くて重いから
 ひとたまりもない
 大黒柱は、家族を支える。。。
 神様みたいに思っていたから
 それにつぶされて死ぬなんて
 本当に、神も仏もないって思ったよ

 もちろん、地震は怖かった
 そんで、悲しかった
 あの地震は、悲しい地震だった。。。」


悲しい地震。。。

ちーばぁちゃんの言ったその言葉が
今も心に残っている

経験した者しかわからない悲しみがあるのだ
。。。と思った

そして、その悲しみは、ちーばぁちゃんの心の中に
傷跡として、ずっと残っていたのだろう

けれど、人はいつまでも
泣いて暮らせるわけではない

悲しみを乗り越えて
歩まなければならない

前へ。。。進まなければならない

悲しみを乗り越えるたびに
きっと、ちーばぁちゃんは
強くなってきたのだ

あんなに素敵な笑顔で
笑えるようになったんだから

笑顔が素敵なちーばぁちゃん

いくつもの傷を心に負いながらも
穏やかに笑える彼女に
生命の強さを見た気がした

私は、ちーばぁちゃんが大好きだった

ちーばぁちゃんが亡くなった日
ちょうど、息を引き取ったであろうその瞬間

私は何にも知らないで
家で、夕食のカレーを食べていた

カレーなんか食べて。。。
美味しいね。。。とか言って
笑っていた

なんだか、そんな自分が悲しかった
ちーばぁちゃんが。。。大変な時に
私は。。。笑っていたんだから

ちーばぁちゃんが夢の中に出てきたのは
それから、数ヵ月たってからのことだ

夢の中で、私はちーばぁちゃんに言った

「カレーなんか食べててごめん
 最期の時に、一緒にいてあげられなくて
 本当にごめんね。。。」

そしたら、ちーばぁちゃんは
こんなことを言った

「天国に旅立つまえに
 みんなの顔を見にいったよ。。。
 あんたが、一番嬉しそうな顔をしてたよ
 カレー。。。美味しそうに食べてた
 あんたの幸せそうな顔が見れて良かったよ
 本当に嬉しかった。。。
 だから、そんなこと気にするのは
 もうやめておくれ。。。」

そう言ってもらえて。。。
夢の中で。。。私は、思い切り泣いた

朝、目が覚めて。。。夢を思い出して
。。。また、泣いた

わざわざ、夢に出てきてくれたのは
ちーばぁちゃんの優しさのような気がしたから

死んだあとまで、心配をかけるような。。。
私は、本当に情けない孫だよね

ごめんね。。。ちーばぁちゃん

あの夜の夢は。。。

もしかしたら。。。
私自身が、罪悪感から逃げ出したくて
勝手に見てしまった夢なのかもしれない

けれど。。。こうも思う
もしも、ちーばぁちゃんが生きていたら
きっと、同じことを言ってくれただろうな

。。。なぁんて。。。

ちーばぁちゃんは。。。
そういう優しい人だった

優しくて。。。
そして、強い人だった

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くれよん [エッセイ]

領収証を買いに。。。職場の近くの本屋へ行った
この本屋には、結構広い文房具売り場がある
領収証を探しながら
あちこち歩きまわっていると。。。
なんだか懐かしいものを見つけた

くれよん。。。


幼稚園の時。。。
園庭で風景をスケッチしたことがある

12色のくれよんと画用紙を持って。。。

絵を描くことは苦手だった
でも、先生が言った

「上手に描こうなんて思わないで
 見たままを描けばいいのよ。。。」


見たままを描く。。。

そっか。。。
それなら出来るかもしれない

上手く描けるとは思わなかったけど
なんだか、楽しく描ける気がした


園庭にあったすべり台を描いた


私の描いたすべり台は
すべり台より。。。象に見えた

すべり台と象が似ているなんて。。。
自分の絵を見て初めて気がついた。。。


……って。。。
似てるわけがない。。。よね。。。


見たままに描いたつもりが
見たものとは違うものになる。。。

ちょっと凹む

空を見上げると
おひさまが見える


青い青い空と
眩しく輝くおひさまを
私はそこに描こうと思った


今度こそ。。。見たまま。。。。

呪文のように、そうつぶやく



まずは、青い空を
水色のくれよんで塗りたくる

そして。。。つぎはおひさま。。。

赤いくれよんを手にした時。。。
私は気がついてしまった

おひさまって。。。赤???


眩しくて見えにくかったけど
私は、何度も何度も確かめた

私の目にうつるおひさまは
赤とは程遠い色をしていた

おひさまが赤いのは
夕暮れ時。。。だけ

今は。。。う~ん。。。

12色のくれよんの中から
私がチョイスしたのは。。。

黄色。。。


どう見ても。。。
黄色が一番近い色に思えた

見たまま。。。

そう先生が言ったもん。。。
私は迷いを捨てて
黄色のおひさまを描きあげた

そのあと、みんなで描いた絵を見せあった


「それ何???」

私のおひさまをゆびさして
ゆみちゃんが言う

「おひさま。。。」

私が答えると

「おひさまは、赤いんだよ
 それじゃ、お月さまみたいじゃん
 それに、象なんてどこにもいないよ。。。
 夜の動物園???」

ゆみちゃんは、ゲラゲラ笑いながらそう言った。。。


よ。。。よるの動物園って。。。
描いてないよ。。。そんなの。。。

でも、なんだか反論も出来ず

悔しくて。。。
泣き出してしまった


懸命に見たままを描いたのに
けっきょく。。。

象に見えるすべり台と
お月さまに見える
いびつな黄色いおひさまを描いてしまった私


見たままを描けばいいのよ。。。


そう言った先生が。。。
泣き続けている私をなぐさめようとして
こんなことを言う。。。


「描きたいものを描いてもいいのよ
 お月さまがとっても綺麗に描けてるね。。。」


……。

だからさ。。。お月さまじゃないってば。。。

頼みの綱だった先生にもわかってもらえず
しばらく。。。私は泣き続けた

先生は、困った顔をしていたなぁ。。。


だけど、最後までわかってはもらえなかった
私の泣き続けている理由。。。





その日描いたスケッチは。。。
自宅に持って帰った

「今日、幼稚園でお絵かきしたんだって?
 見せてごらん。」

母は、幼稚園で絵を描いたことを知っていた

今から思えば。。。
たぶん、幼稚園の先生から連絡があったのだろう
お月さまと言われて。。。
理由も言わず、私はただ。。。
泣き続けていたから


鞄の中から、今日描いた絵を出して
母に渡した。。。

母は。。。

「良く描けてるよ。。。おひさまが素敵。」

と言った。。。

(;゚д゚)ェ..。。。おひさまに見えるの???


まさか、わかってもらえるって思ってなかった
びっくりして
うれしくて
安心して

とにかく。。。

気持ちがどっとゆるんで。。。
また泣いた。。。


ちぢこまって震えていた心が
救われた気がしたんだ。。。

急に泣き出した私の頭をなでながら
母は。。。何度も言ってくれた。。。

「ほんとにね。。。よく描けてるよ
 あなたのおひさま。。。」



振り返れば。。。
ずっと。。。ずっと。。。
母は私の味方だった


だれよりも
なによりも
私をわかってくれていた


私は私でいいんだと
励まし続けてくれた



くれよんを見ると。。。
今でも時々思い出す

あの日のおひさまの色と。。。
私を救ってくれた母の言葉と。。。

                     おしまい





最後まで読んでくださって
ありがとうございます。。。


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貰い湯 [エッセイ]

夕方、家の近所を散歩していたら
どこからかすご~く懐かしい匂いがしてきた。

……はて?
何のにおいだったっけ。



記憶の奥の奥から
やっと見つけたこのにおいの正体は
薪をたくにおいだった。

小さい頃、ばぁちゃんの家のお風呂は
まだ薪でたいており
隣の家のおじいさんが
一日おきに貰い湯にやってきていた。

おじいさんの手には、薪を数本と牛乳。

「お風呂もらいにきたよ!!!」

そう言いながら薪をばぁちゃんに渡して
お風呂に入る。
お風呂上りには少し茹った赤い顔をしながら、
牛乳を一気飲みした。

笑顔の可愛らしいおじいさんだった。


ある日
いつものように貰い湯にやってきたおじいさん。
なんとなく元気がない。

「薪がな。。。手に入らなくなって。。。」

薪を使う家がどんどんなくなっていった頃の話だ。
薪を扱う店も減ってしまった。
薪を集めに山に入る人もいなくなった。

そんな時代……

おじいさんは申し訳無さそうな顔をしながら、
手に持っているものを差し出す。



「これ、代わりにもってきた。こんなもんしかなくてな。」



握られていたのは、割り箸だった。
ばぁちゃんがこらえ切れずに笑い出した。

「そんなに気を遣わなくてもいいのに。。。」

やっとそれだけいうとまたけらけらと笑った。
隣のおじいさんも照れくさそうに笑った。

じぃちゃんもいとこ達も私もそろってけらけらと笑い出した。

辺りは、薪をたくにおいに包まれていた。



このにおいを嗅ぐとあのときの
おじいさんの照れ笑いを思い出す。

今では
滅多に出くわす事の無いこのにおい

イマドキ、
薪を使っている家がどこかにあるのだろうか。

でも、無いとも言えない。

……このあたりは田舎だからな。。。



隣の家が建て替えをして、
自分の家にお風呂をつけてから

おじいさんはもう、
貰い湯にやってこなくなった。



一緒のお風呂を使う隣人。

醤油だの味噌だの貸し借りしあう付き合い。

とても近しい中にも、ちゃんとした礼儀があった。

それは、薪でも割り箸でも
なんでもよかったのだけれど

手渡しで伝わる感謝の気持ち、
そのものだったような気がする。



古き良き時代の優しい思い出のひとつである。。


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